龍ヶ崎翔琉、ショタになる。

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「あの、」 困惑してつい呼び止めてしまった颯斗だが、先を歩く少年にはその声が聴こえなかったのだろう。 一度も振り返ることなく、リビングのドアの向こうへ消えてしまう。 なぜか颯斗は、その後ろ姿を追いかけなければならない気がした。 すると少年は、力なくソファへ腰かけていた。 ちょこんと、可愛らしく。 けれど、どこか物悲しそうな表情をしていた。 その姿を見た颯斗はなんだか居たたまれなくなり、咄嗟に駆け寄ってぎゅっと抱き締める。 腕のなかにある身体は、少年から青年へと移り変わろうとしているしなやかさと強靭さを兼ね備えた、意外にも華奢ではないしっかりとした作りの男のものだった。 「……颯斗」 驚いたように腕の中の少年が顔を上げる。 そして、グレーの瞳を不安そうに揺らした。 「俺、コーヒーを飲んだらこんなにも小さくなってしまったんだ」 少年はダイニングキッチンのテーブルに置かれたホワイトのマグカップを指差す。 「え? コーヒーを飲んだら小さくなったんですか?」 まるでファンタジー映画のようなことを言い出す少年に、颯斗は思わず立ち上がり、テーブルまで近寄る。 たしかにそこには、飲みかけと思しき冷めたコーヒーが入っていた。 「えっと、これですか?」 マグカップを手に取り、少年へ向かって掲げてみせる。 「そうだ。それだ」 少年が応えるなり、颯斗はそのマグカップに鼻を近づける。 くんくん、と匂いを嗅いでみたが、とくにあやしい匂いはしない。 冷めたコーヒーの少し、酸味のあるビターな香りだけが漂う。 なんら普通のコーヒーとは限らない。 訝しんだ颯斗はそのマグへ口づけようとする。
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