2)50年後 

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2)50年後 

ー50年後ー 「おばあちゃん。昔の写真みていい」  遊びにきていた孫、 ルカとルイが家のAIに命じて、私の昔の写真を見ていた。  壁1面に昔の写真を展開してちょっと恥ずかしい。  その上…… 「おばあちゃん、美人~色白い」 と声をあげている。 「えーと、40歳くらいは綺麗だったけど、おじいちゃんにあった時は男みたいやったよ。ほら」 と頬が赤くなるのを感じながら、夫と出会った頃の写真をみせる。ショートカットで日焼けし、げじ眉で勝ち気な印象の少女、若い頃の私の写真だった。 「ほんとだ おばあちゃん整形した?」 「そんなわけないじゃない。親からもらった顔を整形するなんて親不幸でしょ」 「じゃあ、おじいちゃんに会って綺麗になったんだ」 「恋すると綺麗になるのねってこれのことね」 「ははは そうかもね」 「じーじの愛の力ね」  そんな孫たちのからかいに恥ずかしさが増すのを感じ、熱った頬を押さえた。 「でも、この学校に入らなくてこの病院で働かなかったら、出会ってなかったかもね」 と病院の写真や看護学校の写真をみせた。  看護士だった私が働いていた病院とその付属の学校だ。  病院は5年くらい働いていたけど結局、子供の出産や腰を痛めたりしてここはやめ、パートで小さい病院で子育てしながら働いていた。  いろいろあったけど、特に大きなことはなく、平凡な人生だったように思う。  仕事も70歳になりやめて3年前から家でのんびりしている。この子らは息子の子供たちだ。  娘もいるが娘は結婚せず、世界のいろいろな国を飛び回っていた。2週間前は、ドイツにいたみたいだけど、今はどこにいるのか。いろいろな国に回って、そこの国を動画でアップして紹介したり、いろいろな国の物を転売しているみたいだけど。  -自由な性格は私に似たかも。 「おばあちゃん、この桜きれいね」  孫のルイが満開の桜の写真を壁に展開する。  -あーこれは、あの時の…… 「ジージと初めてのデートでのお寺の桜ね」 ​ 「えー初デートがお寺?」 「そうなのよ。ジージ、私を誘う時の誘い文句が 『入院している母に桜の写真を撮って来ようと思うんですけど、桜のいいスポットがありますか?』って。 『じゃあ 三井寺にいったらいいですよ』 ていったら、 『男一人で見に行くとちょっと恥ずかしいって一緒に行ってください』っていわれて、私も近くなのに行ったことなかったから 『じゃあご一緒します』って言って一緒に行ったのよね」 「でも 初デートでお寺って、ジージちょっとダメダメだよね」 「まあ、そうね。でもそんなところも素朴でいいと思ったし」 「おばあちゃんってまだジージ好きなのね」 「……私も結婚して50年近くたつのにバカだと思うのよね」  未だに好きだなんてねと笑っていると、なぜか呆れた表情を孫たちは私に向けていた。 「えっと……他も見るでしょ?」  孫たちの視線に恥ずかしくなって、ごまかすように他の写真を壁に展開する。 「これはあんた達のお父さんが小さい頃、行った海。 この海の日の出、綺麗でしょ。ここ砂丘のようになってて、砂もさらさらで」 と昔家族で行った海の写真をみせる。 ​  ここの砂浜は細かい砂で、その砂を山のように盛り上げてある。砂がサラサラ過ぎて、靴の中に砂が入って大変だったけど、ここで撮った海の日の出は何とも言えないくらい綺麗だった。 「こっちのこれ、ピンクのすすきなんだけどこれも素敵でしょ」 「ピンクのすすきなんてあるのね」  ―ピンクのすすき、これはそういえば韓国に旅行した時だったっけこれ撮ったの。 「これは、セドナ。洞窟みたいだけど壮大さがすごいのよ」​ ​ 「ホントだ、今もあるかな」​ ​ 「あるんじゃない、検索してみたら」 「リア 検索 セドナの洞窟」  ルイが部屋に設置されているAIに呼び掛けると、窓にセドナの洞窟の映像が写し出される。  風の音がヒューとなる。肌に風が触れる感覚と爽やかな香りがした。何の香りかはわからないがほのかな香りに、風を肌に感じながらビューという音を聴く。  ーいい時代。3Dで映像が部屋に展開され、実際そこにいるように五感も感じられるのだから。  写真を見ながら1時間くらいたっただろうか。そろそろ孫たちに美味しいものを……。と立ち上がった。 「夕食の準備するから、これ見終わったら閉じててね」 ​ と孫たちにそう言って台所に向かった。 「はーい」 「あ、これ綺麗、これもいいね。もらうね」  どうやら孫たちは気に入った写真を自分たちのフォルダーに送っているようだ。 「おばあーちゃん。このメール前から使ってるの?」 ​  台所のとなりのリビングからルカの声がした。 「最近つかってないけどGoogleのメールは高校の時からつかってるかも」 「”過去メール”送ってみるね」 と”過去メール”を送ろうとしていた。  ”過去メール”  普通の予約メールは何日か後に日にち指定をして送るものだがそれと同じで、”過去メール”は最近開発されたもので過去に日にち指定をしてメールを送るものだ。  私の息子はお役所務めをしているので、”過去メール”を使う権限があるが、歴史に異常をきたす恐れがあると一般化はされてない。送る中身も随時サイバー警察のチェックがあるので露骨に未来から送ったものとわかるものは削除されるらしい。 が実際は”過去メール”に対しての法律がまだ定まっていないのでそのチェックもそんなに厳しいものではない。 「そんなどうやって送るの。50年前ってそもそも送れるの?お父さんだったら資格あるけど、あんたらないのにヤバイんじゃない?」 「大丈夫よ。ちょっとお父さんのメールにアクセスしたらいいし、この間お父さんの手伝いした時個人認証もコピーもとったし パスワードも知ってるから」 と、サイバー大学に通うルカは父親である息子の仕事の手伝いを時々しているせいか、息子のサイバー内に入るのは容易いらしい。息子のIDを利用して送るようだ。 「えーとこの桜とか、ピンクのすすきとか、 そうそうおばあちゃんの入学時の学校のパンフレットとか、その時の病院の写真とかはおくらないといけないかも」 とルイがルカに行っている。 「リア、おばあちゃんの高校3年の時って何年度か計算して、メール設定お願い」  AIのリアにルカが命じて設定していた。 「学校のパンフレッとかどうして送るの」  私は不思議に思いルカに聞いてみた。 「おばあちゃん、はじめその学校受験する気なかったって言ってたじゃない。だから高校3年生の時のおばあちゃんにパンフレットとか送って、この大学考えてもらわなきゃ」 「でもその時の大学のパンフレットを送らなきゃだめでしょ」 「心配しないで、おばあちゃんの卒業した学校の資料室から、おばあちゃんが入学した年度のパンフレットをダウンロードしたらいいし。リア、oo年度、w看護学校のパンフレットダウンね」  AIに命じて昔通っていた大学のパンフレットをダウンロードし、ご丁寧に ursコードまでつけて資料請求できるようにしていた。  ーどうやら息子も優秀だが孫も優秀なようだ。  そういえば、あの時この学校をうける気なかったのに、gメールにパンフレットがこの学校だけ5ー6度来てたことを思い出した。資料請求をいろいろしてたからメールがきても不思議ではなかったが、他の大学に比べ何度も来ていたのでまあ受けてみようかと思って受けたような気がする。実はこれは孫が未来から送ってた?  ―あの桜の写真。  高校3年のとき、毎日のように送られていた不思議なメール。 -ああ あの写真、夫と初デートした場所の桜。仕事場から近くて、歩いて5分のとことのお寺の桜だったんだ。  桜 ピンクのすすき 海 いろいろな風景写真 。  -家族旅行したときの写真だ。   私が仕事していた病院、息子の建物   息子が好きで虫とか熱帯魚とか飼ってたけど、これも……  ー50年前、私が高校3年生のとき3ヶ月くらい毎日のようにきていたメール。あの写真って……   そういえば送り主の名前 Rだった。ルカ、ルイのR?  あの時毎日来ていたメールの写真と、これらの写真が50年を経て私の頭の中で繋がった。  私が撮ったものを未来の孫が過去の私のメールに送ったものだったのだ。  私が一目惚れした相手、夫と私を出会わせたキューピットが、この孫達。  -そっか、夫とは出会うべきして出会ったのね。  そんなことを思いながら、孫たちに視線を移し、  ーかわいいキューピットさん達、ありがとうー と心でつぶやいた。
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