6人が本棚に入れています
本棚に追加
不器用な小学生の私は、休み時間に友達と遊ぶこともなく、後ろの席で独り黙々と読書に励み、本の世界に入り込む夢現な一時を過ごしておりました。その事柄への背景に、私の顔面はみすぼらしく、妖怪のような酷い容貌をしていたことが一役買っているのかもしれません。
顔は酷い有様ならば、金の方はどうかと申しますと、私の実家は金持ちではありませんでした。初めて廻る寿司に行くと聞いた時は心臓が飛び出るくらい歓喜したのですが、なぜか行く前に食パンを食べさせられてから行きました。今思えば、料金を少しでも安く抑えるようと父と母も必死だったのでしょう。
小学校高学年に家庭科で裁縫を習いました。そこで思わぬ収穫があったのです。人間関係が不器用だった私が、手先は器用だったということが分かったのです。
授業で教わったことをすぐさま家でも実践しようと思いました。妹がおりましたので、彼女の大事にしていたぬいぐるみに穴が開いており中の綿も少しばかり出ておりましたので、すっかりぺちゃんこになり潰れてしまった綿を取り出し、新たにマシュマロのようにふわふわとした綿を入れてやると、妹から喜ばれ、私はすっかり得意な顔をつくり、現実世界もそう悪いものでもないなと思うようになったものです。
最初のコメントを投稿しよう!