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さて、彼女の部屋の合鍵を持った私は、暇を見つけては彼女の不在時に部屋を訪れ、彼女の優しい温もりに酔い痴れました。当然です。SNSで毎日見ていた、憧れを抱いていたあの部屋に私がいるのです。
それからというものも、私は愛しい彼女の香りがかすかに残る部屋を訪れると、まるで彼氏かのように振る舞い、妄想の世界に入り込むのでした。
ある時は、映画を見てはああでもない、こうでもないと議論したり、またある時は、料理を作ったり、時には、ぬいぐるみの修理の技術を得意な顔で話すこともありました。
また、彼女の部屋にはベッドがあり、お恥ずかしいことなのですが、男女の関係にまで発展してしまいました。彼女の裸体は、この世の芸術という芸術を一箇所に集めたとしても、とてもではありませんが到底敵わない程、しなやかで美しく、逞しくもありました。
それからというものも、SNSを見ては、彼女の部屋を訪れるという生活を続けておりました。
人間というのは傲慢な生き物です。欲が満たされると、さらに欲を欲してしまう哀れな生き物なのでございます。私は彼女のことをもっと知りたくなりました。
そこで私は彼女の部屋に盗聴器を設置しました。カメラを設置することも思案しましたが、カメラはレンズが光って見つかりやすいという危険がありましたので前者を選択したのです。
盗聴器を設置してから数日間は彼女の声を鮮明に感じ、特に情欲の時には実に艶やかに喘ぐ彼女に恍惚し、時間があっという間に過ぎ去りました。ですが、それも数日間だけで、とある大事件が起きました。
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