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DMを最後まで読み終えた美佳は鳥肌が立ち、これから起こるであろう嫌な予感、忍び寄る黒い影を全身に感じざるを得なかった。
美佳は助けを呼ぼうと大声で叫んだ。
しかし、その声は美佳の内部だけに広がった。ようやく外部に漏れた声は震えを伴った、かすれた、吐息のような声だけだった。このままでは、得体の知れない、常軌を逸脱した猟奇な男が家に上がってくる。恐怖で戦慄し、強張った表情の美佳にはただただ玄関の扉を見つめることしかできなかった。
静寂が部屋を支配した。美佳の呼吸のみが感じられる。
ドアからノックの音が聞こえた。その後、音をたてずにゆっくりと鍵が開錠され、同様にドアの取っ手もゆっくりと傾いた。
美佳の恐怖が頂点に到達した時、ドアが開かれた。そこには一人の男が立っていた。見慣れた顔の明宏の姿であった。彼は吞気にやあと腕を伸ばして挨拶している。
美佳は拍子抜けするとともに、緊張の渦から抜け出すことができ、安堵の表情を浮かべゆっくりと溜まっていた恐怖を息に乗せて吐き出すと、ことの顛末を明宏に問いただした。
明宏は自身の代わりに別の者が出張に行くことになり、美佳を驚かせてようとドアをノックしたとのことであった。
美佳は明宏の企みではないのだと分かり、再び気味悪くなったが、一通のDMが入ったことに気がついた。そこには次のように書かれていた。
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