首刈後輩といっしょ

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首刈後輩といっしょ

──頭蓋骨が好きなんです。後輩の女の子はそう言った。  ○○市連続殺人事件。そんな見出しが新聞の一面を大きく占めていた。何気なく点けたテレビのニュースからも、その事件に関していかつい顔をした壮年の男性アナウンサーが話していた。 ――『首なし死体』  世間には公表されていないがその殺人は非人道的で残忍。殺人犯は被害者の首を刈り取り、頭だけ持っていく。という噂がインターネットでは騒がれていた。 「やばいやばい! 今日日直だった!」 ニュースを見ているとそんな慌ただしい声と共に妹の美枝が食卓に着いた。 「おはよう、美枝」 「ん。私のご飯は?」  朝の挨拶もそこそこに美枝は自分の食事を要求して来た。炊飯器の蓋を開いて美枝の茶碗を手に取りご飯を盛る。それを手渡す。朝の一連の流れだった。 「やば、もうこんな時間じゃん」  美枝が焦った様相で呟く。 ニュースの内容よりもテレビの左上に表示されている時刻の方が美枝にとっては重要なようだった。7時28分――登校するには少し早い時間だが。 「日直の仕事があるのか?」 「ん。そう……んむ……」 「美枝。慌てて物を食べるな。しっかり噛んで食べなさい」 「朝からうざいよ、真にぃ……なんでそんな真面目なの」  美枝は俺こと真に向かって辟易した目を向ける。 「真面目じゃない、普通だ」 「はいはい……ごちそーさま! じゃ、わたし先に行くから!」  俺の反論を軽くあしらって、美枝は登校する準備に係る。  俺も飲みかけのオレンジジュースを飲み干して、マグカップと空になっていた皿を流し台に片付ける。制服の袖に腕を遠し、支度を整えて食卓に戻って母親が用意してくれた弁当を取りに行く。 「あいつ……弁当忘れていきやがった」  自分のものを取ったところでもう一つ包みが残っている事を確認し、ため息を吐き出す。あの慌てようだ。すっぽり弁当の事を忘れたのだろう。 「仕方ない、届けてやるか」  俺が住むこの家から通っている学校までは歩いて20分程のところにある。家を出るときに確認した時刻は7時57分。8時半の予鈴までには何とか席に着けるだろうという時間だ。 「これは始業前に届けるのは間に合わないな……」 観念して、1限目が終わった後の休憩時間に弁当を届ける事にした。  学校が指定する通学路に出ると同じ制服を身にまとった男女が俺と同じく学校を目指して歩いていた。  世間ではこの市で起きている連続殺人事件で騒がれているが、こうして何も変わらない日常の登校風景を見ていると、いまいち危機感だとかそういったものが自分たちには欠落しているように思う。  実際、この中のいったい何人が連続殺人犯を恐れ、びくびくしながらそれでも日常に縋り付いて登校している者がいるだろう。大半の人間は自分とは関係のない出来事として日常に埋没しているだろう。対岸の火事だ。      
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