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「うまいっ!」
じっくり炒めた玉ねぎとひき肉が、スパイシーに味付けされている。オムレツを食べ、俺は感動していた。ワンプレートにオムレツとともに盛り付けられたサラダには、手作りであろうオニオンドレッシングがかけてある。
「何これ、チョーうまいんですけど!」
ご飯を口いっぱいに詰め込み、俺は満面の笑顔でコウイチを見た。
「それは良かった。」
コウイチの返事は素っ気ない。黒のスエットの上下を着て、濡れた髪のままのコウイチは、俺の隣に並んで座りパソコンの画面を睨んでいた。なんでキャスターつきの椅子が2つあるわけ? 誰かが仕事しにここに来るのか? だからパソコンが3台あるの? いろいろ疑問をぶつけてみることにした。友達になるから遠慮はいらない。
「ね、コウイチ君は何歳?」
とりあえずはお歳を。
「……27。」
自分と結構離れていた事に驚く。画面を見つめたままのコウイチの横顔が不機嫌になってないことに安堵した。
ネギとワカメの味噌汁を飲んで、まだその旨さに感動した。
「何これ、ウマイ。出汁効いてる。おれネギとワカメの味噌汁大好き。エノキも入るとサイコー!」
「……お前、料理するのか?」
ほんの少し顔をこちらに向けて、コウイチが聞いてきた。よしよし、それでいい。
「ほぼない。社食と下の惣菜屋で過ごしてる。あ、飯は炊くよ? たまに。」
小鉢に盛り付けてあった納豆と緑の野菜の和え物をご飯にかけた。
「不健康そうだな。部屋には立派なキッチンがあるだろう。家電も備え付けてあるはずだ。」
「だって、便利じゃん、作らなくでも。ここなんでもそろってるし。」
俺が働くFO企画株式会社は、この大型ショッピングモール「FOUR」を所有している。三階建の建物に、2百を超す様々な店舗が入っている。その中で、建物の一部と地下に研究施設が隠されているのだ。ショッピングモールはカモフラージュ、ってとこ。俺も半年前まで知らなかった。
一年前、二階にあるカフェのバイトやってた俺が、何故か分からないが、杉崎というおっちゃんに気に入られ、スカウトされたってわけ。特別な配達業務ってだけしか聞かされなかったけど、給料がとにかくいいので釣られた。内定もらってた会社を蹴って飛びついた。まさか、一年間行動を制限されるとも知らずに。
「コウイチ君の彼女幸せだなー。料理作ってくれる彼氏。うらやましー。」
最後のご飯を掻き込みながら、話しかけた。
「……恋人はいない。ここの管理人やってていると思うか?」
相変わらずパソコンの画面を睨みながらコウイチが言った。目が合わん。
「な。コウイチ君も行動制限あるの? 今度『元』に飲みに行こうぜ。」
コウイチがまた少しだけこちらを見た。
「いつかな……。」
よーし、友達ゲット!
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