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4既視感あふれる話を聞きました
「さて、外は人が多くて、話ができなかったが、ここならいいだろう。」
「そう。ここなら誰も来ない。あなたはいったい何者。」
部屋に着くなり、二人の雰囲気は一変する。警戒するような鋭い目つきでにらまれたカナデは深いため息をつく。彼女たちの視線にひどく傷ついた。とはいえ、警戒されるのは当たり前で、カナデは自分の名前を名乗ってはいたものの、それ以上の情報を彼女たちに与えていなかった。しかし、それは二人にとっても同じことであり、カナデも、イザベラとエミリアという名前しか聞いていなかった。聞いていないにも関わらず、カナデには、二人のことが手に取るように予想できた。
「イザベラさんが女性騎士かまたは、剣士。エミリアさんは魔法使いか、教会関係者ですか。そして、おそらくあなたたち二人は、今回の魔王討伐に参加するメンバーですかね。」
つい、出来心でカナデは二人の職業を口にする。疑問形で口にはしているが、外れているという思いはなかった。それは、今までの異世界転生物による知識がそうさせていた。
「な、なぜそれを。」
「この情報は機密事項だったはずじゃなかったかな。」
どうやらカナデは正解を言い当てたようだ。二人の視線がさらに険しいものになるが、カナデは苦笑するだけにとどめた。誰だって見ず知らずに人に自分の素性を言い当てられていい気分がする者ではない。よほどの有名人をのぞいて。
「そんなに警戒しないでくれますか。私はあなたたちのように武器も魔法も使えないただの凡人です。お互いに名前は伝えていましたが、詳しい自己紹介がまだでしたね。」
カナデは、息を大きくすい、改めて自分の素性の説明を始めた。
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