5勇者はオタクでした

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5勇者はオタクでした

 次の日、カナデとイザベラとエミリアの三人は、教会に向かっていた。昨日泊った宿から歩いて数分ほどにその協会はあった。 「教会も見たことある建物だ……。」  教会は、カナデがもといた世界、日本の函館や横浜、神戸にある外国人が多かった場所にある教会と同じようなものだった。どう考えても、この世界を創造した神様とやらは、日本を参考に適当に作ったとしか思えない。きっと、地球での生命の創造を終えて、新たに世界を作ろうと思い至ったが、新たに考えるのが面倒になって、文字だけいじれば問題ないと踏んだに違いない。  なんていい加減な神様だ。今度どこかで遭遇したら、一言言ってやりたい気分だった。もしかしたら、自分が初めに出会った女神とやらが創造したのかもしれないが、とりあえず、この世界の創造主に文句の一つでも言ってやりたい気分だった。  教会の中に入ると、そこには司祭らしき白いローブを身につけた若い男性が出迎えてくれた。イザベラとエミリアは懐から何か札みたいなものを司祭に渡していた。 「あなた方がこの度の魔王討伐に選ばれた「剣士」と「魔法使い」ですか。では、「勇者」も来ていますので、こちらにご案内します。」  札を確認して、司祭は二人を連れて、一度教会から出て、少し離れた家屋に案内しようとしていたので、慌ててカナデが声をかける。 「待ってください。私のこと、忘れていませんか。」 「おや、あなたも選ばれたのですか。それならば、その証を見せていただかないといけませんな。」 「いや、そんなものは持っていませんが……。」 「司祭、この人も私たちと同じ魔王討伐に選ばれたメンバーの一人らしい。特別に入れてやってもらえないでしょうか。」  イザベラがカナデのことをフォローする。しかし、司祭はカナデが魔王討伐メンバーであることに懐疑的だった。 「ふうむ。ですが、残りの枠は「聖女」のみ。どう見ても、聖女としての素質があるようには見えませんが。」  司祭は、カナデの身体をじっとなめるように上から下まで見つめる。司祭のいうことは最もだが、それでは永遠にカナデはもとの世界に戻ることはかなわない。そもそも、魔王を討伐したところで、もとの世界に戻れる可能性は少ないのだが、倒さないと、可能性はゼロである。一塁の望みをかけて、魔王討伐にあたりたいと考えていた。  しかし、ふと考える。もし、自分が魔王を討伐しなくても、誰かが倒せば問題ないのではないか。だとしたら、わざわざ面倒なことをしなくても、その辺でぶらぶらと生活していれば、いいのではないか。  そうだ、思えば一人で自立した生活をしなければと思っていた。実家通いで、一人暮らしにあこがれていたことを思い出す。女神に異世界転移させられて、泣く泣くこの世界に来ることになったが、これは良い機会ではないか。今までの知識が役に立つとも思えないが、それでも一人で自立した生活を送ることができるチャンスだ。  そう思うと、急に魔王討伐が面倒なこととなってくる。自分が「聖女」である証拠とやらもないので、このままとんずらを決め込んでも問題ないだろう。さっそくカナデは先ほどの自分が発した言葉を訂正する。 「すいません。間違えました。私はここでおさらばしま、」
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