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「勇者様の従者さんですか。ええと、私の名前はソフィア。ただのソフィアで結構です。聖女としてこの場に来たのですが、信じてもらえるでしょうか。」
「信じるとも。何より、その容姿こそが聖女の証。あなたを魔王討伐メンバーに迎え入れよう。」
鼻の下をデレデレに伸ばしたユーリは気味の悪い声であっさりと、ソフィアと名乗る聖女を魔王討伐メンバーに引き入れる。
「ありがとうございます。お二人も違う国から来たのですか。」
「そうだ。」
はにかむように笑う姿はまるで天使のようだった。心癒されるような笑顔で、ユーリもカナデもすぐにソフィアに対しての警戒を緩くする。ユーリは気をよくして、自分の情報をべらべらと話し出す。
「ちなみにオレは埼玉出身だ。そこの女の出身は知らんがな、どうせ、田舎のいも女というところだろ。」
「失礼な、私は愛知出身。なめると痛い目見るぞ。」
「東京と関東以外なんて、どうせ田舎だろう。」
「お前こそ、関東の田舎風情がなめた口ききやがって。」
お互いの出身地についての議論が始まるのかと思いきや、それは聖女の笑い声によって遮られた。
「ふふふふ。」
ソフィアは可愛らしい声で笑いだした。口元に手を添えて上品に笑いをこらえているようだが、完全に笑いを隠しきれてはいない。
「面白い方たちなのですね。そのアイチやサイタマとはいったいどのようなところなのでしょうか。」
『えっつ』
二人はすっかり意気のあったコンビのように何度目かの心の声がハモりを見せた。それもそのはず。二人は聖女も日本のどこかからこの世界に転移してきたと思っていたのだから。
「そのように驚かれても、わからないのですから、どうしようもありません。」
「では、いったい日本ではないとしたら、この世界の住人か。いや、でもそんなはずは。黒髪黒目は珍しい設定のはず。異世界転移者以外に考えられない。」
「日本以外にあり得ないだろう。それ以外なら……。」
二人は、聖女の出身地について悩み始めたが、すぐにソフィアが自分のことを話し出して、疑問は解決された。
「私の出身は、聖フローラ共和国です。聖女として、役目を果たすことができるように日々修行に励んでいたのですが、ある日いきなり女神さまに呼びだされてしまいました。しかし、聖女としての任務を全うするまたとない機会。精一杯励みますとお答えしました。」
『まさかマジもんの聖女様とは。』
この二人にお笑いコントでも組ませたら、仲良くやってくれるだろう。いったい今日何度、心の声をハモらせたかわからないくらいのハモりっぷりを見せたのだった。
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