87人が本棚に入れています
本棚に追加
それから、三人はお互いの情報を交換し合った。カナデとユーリはすでに語り合うことはなかったのだが、ソフィアの話は興味深く、ついつい長話をしてしまった。
「コンコン。」
話を遮ったのは、またもや扉のノックの音だった。
「すいません。勇者さま。そろそろ魔王討伐について、メンバー全員での話し合いをしておかなくては。」
「わかった。すぐに教会に向かうから、心配しなくていい。」
扉をノックしたのは、最初にカナデたちを案内してくれた司祭だった。ちらと壁にある時計を見ると、ずいぶん話し込んでいたようだった。すでに正午を過ぎて、昼食の時間である。
「わかりました。では、ちょうど昼食の時間ですので、昼食を準備してお待ちしております。」
「ありがたい。話の切りがつきしだい、すぐに向かう。」
ユーリの言葉を受けて、司祭はそのままその場を立ち去ったようだ。カツカツという足音が次第に部屋から遠ざかっていく。
「ぐうう。」
司祭が去っていくと同時にカナデのお腹の音が鳴ってしまった。正午を越えたことを確認して、身体が昼食を求めているのだろうか。しかし、このタイミングで主張するのは恥ずかしい。慌てて、ごまかそうとしたが、ばっちりと聞かれていたらしい。
「だせえな。そんなんだから、彼氏の一つもできずに、いきおくれになるんだよ。」
「なっ。これは、つい緊張がゆるんで。」
「ぐうううう。」
今度はユーリのお腹も鳴りだした。ユーリも昼を意識したのだろうか。とはいえ、ユーリは、自分の腹の音が聞こえなかったように冷静さを装って話し出す。
「どうやら、結構な時間話し込んでいたようだ。申し訳ない。つい、ソフィアさんの話に夢中になってしまって。では、司祭に言った通り、オレ達もすぐに司祭のもとに向かうとしよう。」
「そんなどや顔で言ってももう遅い。お前も私と同類だ。腹が減っていると認めたらどうだ。このクソガキが。」
「ふん。お前の方が早かっただろう。食い意地の張った卑しい女が。」
「まあまあ、そろそろお昼の時間ですし、お腹が減っても仕方ないですよ。お二人とも若いのですから、問題ありませんよ。」
バチバチと火花を散らすカナデとユーリの間に立ったのはソフィアだ。
「ソフィアさんの方が若いでしょう。それなのにそんなことを言われても、説得力がありません。」
「いいえ、あなたたちより私の方が年上ですよ。だって、私はこう見えて、30歳を過ぎていますから。」
『……。』
驚きで目を丸くする二人に、ソフィアはにっこりとほほ笑んで、部屋を出るよう促した。
「早く行かないと、また司祭が戻ってきてしまいますよ。」
「そういえば、思い出した。年増のロリがいることもあるんだった。」
「同感。私もその可能性はすっかり抜けていた。」
珍しく意見が一致したにもかかわらず、喧嘩にならなかった二人はそのまま、ソフィアの後を追うのだった。
最初のコメントを投稿しよう!