1テンプレ的転移をしました

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「ま、待ってください。そんないきなり協力しろと言われても、はい、と素直には頷けません。質問してもよろしいでしょうか。」  カナデは予想していたとはいえ、突然のことで戸惑っていた。これは、自分のあこがれていた異世界に行けるチャンスであるが、よく考えて行動したいと思ったのだ。いろいろ条件を付けて、納得してから行かないと、後々が大変なことはすでに小説やマンガで、わかっている。 『うむ。わらわは、人の心が読めるのだが、すべて理解しているようだったがのう。どこでそのような知識を得たのかと思えば、書物とは。まったく、そなたの居る世界は面白いのう。まあ、おおむね、そなたの考える通りのことだ。何を質問する必要がある。』 「いえ、確かに私は、異世界転移・転生物の話を好んで読んできたので、その手の知識は豊富だと思います。ですが、それとこれとは話が別です。私を元の世界に戻してもらえないでしょうか。」  初めこそ、ぜひ異世界に行きたいと思っていたのだが、冷静になって考えてみると、異世界に行ってもよいことが果たしてあるのだろうかと疑問が頭をかすめた。  異世界に転生することに憧れてはいたものの、一つ、納得いかないことがあったことを思い出した。しかし、それを口に出すこと前に女神らしき女性にカナデ自身の心を読まれてしまった。 『お主は、もといた世界で退屈していたのだろう。それなのになぜ、元の世界に戻ろうと思う。戻ったところで、そなたの生活が面白くなるわけでもあるまいに。まあ、戻ることは二度とできないのだが。それと、お主の懸念していることだが、そこまで真剣に悩むようなことか、わらわにはわからんな。』 「そうですか。」  ダメもとでの発言だったので、元の世界に戻れないと言われても、さほどショックを受けなかった。それでもと、一つの要望を女神に述べることにした。 「一つ、要望があるのですが、よろしいでしょうか。」 『構わん。どうせ、お主はわらわに協力するしか選択肢はないのだから、納得がいくまで質問するがよい。質問に答えるかどうかは、わからぬがな。』  カナデには、一つだけ不満があった。異世界転移・転生物を読んでいて、どうしても引っかかることがあったのだ。それをこのさいだから、解決しようと考えた。 「私は、どう考えても、聖女には向いていません。それなのに聖女として選ばれたのはなぜですか。どうせなら、勇者にしてもらった方がいいでしょう。」
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