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 からんっと扉に備え付けられたカウベルが先ほどと同様に冴えた音を出す。女性店員に別れの挨拶を交わし、会計を済ませて店を出ると、夕闇が空を覆っていた。 「はあ、美味しかったぁ……」 「同感です」  味の感想を述べ合いながら帰路を目指す。線路沿いに位置するコンビニの角を曲がれば、黄金色が辺り一面に敷き詰められていた。 「うわぁ、綺麗だね」 「そうですね」 「ほらほら、こっちこっち!」  夕陽を浴びて金色に輝きながら、降りしきる銀杏のなかを歩く。ついつい足取りが軽くなっていく小豆に、苦笑いを返しながら少年はその後を追う。  一陣の風が吹いて、葉々が籠から放たれる鳥のように二人にふりしきった。朱く染まる金色(こんじき)に瞳を吸い込まれる感覚が、秋の到来を実感させる。 「寒くなってきましたね」 「秋だからね~」  空を見れば、黄金の花びらを散らす赤銅の蕾みが徐々に彼方へと枯れていく。その光景に妙なわびしさを感じながら、小豆は表情を曇らせた。
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