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 風呂から上がると、茶柱が夕飯の準備をしていた。くしゃっとした笑顔がこちらに向けられる。  だが、小豆の髪を見た瞬間それがぎこちなく曲がり、鬼の形相で近づいて来た。 「なにやってるんですか!」  ぽこっと軽くげんこつを喰らわせられ、怯む小豆を強引にソファに投げて、洗面所から持ってきたドライヤーをかける。 「ちゃんと乾かせっていつも言っているでしょう」 「ごめんなさーい」  まったく、と悪態をつきながらごうごうとドライヤーを使い、頭を優しく撫で下ろす。奮発して買った高価なそれは、少女の髪をさらさらにする。 「もう、髪ぐらい自分で乾かしてくださいよ」 「やだよ、君がいいの」  目をぱちくりさせて固まる後輩に意地悪な笑みを返す。茶柱はなんだか悔しくなって顔に風を噴射させると、小豆は目を閉じていやいやと首を振る。どことなく小動物のようだ。
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