5人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごめんごめんっ、昨日のことは謝るから!」
急いでそれに追いつき両の手を叩き合わせる。申し訳なさげに頭を下げ、微苦笑を浮かべる。なにを隠そう私は昨日、茶柱をスイーツブュッフェに連れて行ったのだ。
もちろん彼を喜ばせるためだが、下心がないというと嘘であった。茶柱がスイーツに夢中になっている間に席を離れて2時間弱もその場に彼を放置したのだ。
どちらかの性別に偏った店内は異性の茶柱には流石にキツかったらしく、返って来たころには顔が耳まで真っ赤になって、泣きそうになりながら右手で顔を隠してもじもじとしていた。
その幼子のような潤んだ瞳があまりにも可愛かったので、あと五分くらい見ておきたかったことを私は思い出す。
「あ、あんな人の多いところに連れ込むなんてどうかしてますよっ!」
思い切り泣きべそを掻いていた茶柱は恥ずかしさと屈辱で口を濁しながら、頬をその白い肌で朱く染めていた。
「でもでも、美味しかったでしょ?」
「それはまぁ、そうです……けど」
「それに君はほとんど女の子みたいなものなんだし、ちょっとくらい女子の多い所だって平気だよ」
これはお世辞ではないが、茶柱その容姿から相まって一見してみれば女の子との判断がつかない。いまはこうして男物の制服だけど、服装次第では女性にさえ見えるほどの逸材だ。
「なんか釈然としないんですけど、それ」
「まあまあ、今日は美味しいクレープをご馳走するから、昨日のことはこれで終しまい、ね?」
「……ふむ、まあ、クレープに免じて良しとします」
甘いものの事になると途端に怒り口調を途切れさせる後輩に、内心にやつきながら顔をぱっと明るくさせて、ウィンクした。
最初のコメントを投稿しよう!