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 学校から北大橋を渡り川沿いを歩いて数十分のところ、城北通りの裏手の小道にその店はあった。店内は薄暗い照明にレトロな雑貨が鎮座しており、どことなく落ち着いた印象を抱いた。  クレープ専門店というからには若い女性を中心とした客層が目立つが、人数(ひとかず)が少ないせいか、ひっそりと森に佇む小屋(ログハウス)を連想させた。 「……へえ、こんなところがあったんですね。全然知りませんでした」  向かい席に腰掛けた茶柱が、感嘆を漏らす。 「ここ最近できたらしいよ。フランスで六年間修行してたパティシエが経営してるんだって」 「ミシュランでもあるまいし……」 「まあまあ味は保証されてるようなもんなんだし」  メニュー表を開いて真剣な目つきで吟味する後輩に苦笑いしながら、自身も注文を決めて呼び出しベルを押す。すかさず女性店員がメモを持って現れ、待ってましたと言わんばかりに注文を書き留める。笑ったら素敵そうな小顔はショートボブで整えて、なんとなく少女らしさを感じた。
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