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かなり心臓バックンバックンさせつつ、裕樹さんの胸の中にいること数分。
この状況に慣れた……わけじゃないけど、胸のドキドキも落ちついてきた頃。
唐突に髪をさらりと梳かれ、おでこの上辺りにあたたかくて柔らかいものが、優しく押し付けられた。
頬?口?
感触的に口っぽいような……。
「……裕樹さん?」
声をかけると、それはゆっくりと離れてゆく。
「……落ち着いた。ちゃんと約束したからな。変なことはしないって。」
確かに約束した。
裕樹さんなら自分が口にしたことに責任持てる人だと思って、尚且つあたしには魅力なんて無いと思い、裕樹さんを信頼しきって泊まりにきた。
……よく考えたら、いい歳の独り身の男女が、どちらかの自宅に泊まるなんて……
おいしく食べられてしまっても文句の言えない状況じゃない!?
どんな間違いが起きても、完全に自分の責任。
……今になってそんなこと考えるなんて……
裕樹さんと一緒にいれるからって、相当舞い上がってたのかも…。
……あたし、おめでたいヤツだな……。
「……絵里、今更なんだが、『抱きしめる』は変なことに入るか?」
律儀にそんな事を聞く裕樹さん。
見知らぬ人に抱きしめられたら通報ものだから、分類的には『変なこと』に入るかもしれない。
でも……
「……裕樹さんの腕の中って、すごく気持ちよくって居心地がいいので、変なことに入れません。ずっとこうしていたいぐらい。」
あたしは裕樹さんのシャツをきゅっと握って、抱きしめられたまま、更に裕樹さんの胸にすりっと擦り寄った。
「えっ絵里!それ反則!」
焦った様子の裕樹さんが、頭を固定するかのようにあたしの後頭部へ手を添えて、さっきよりも少し強めに抱きしめる腕に力を込められる。
苦しくはないが、抱きしめ直されたみたいで、ドキドキして嬉しい。
「はぁ……。無意識に煽るな。……ちょっと待ってくれ……。」
……どうやら、あたしがまた裕樹さんの何かを刺激してしまったらしい。
余裕のない裕樹さんもかわいくてステキ。
あたしは裕樹さんの腕の中で微笑みながら、裕樹さんが落ち着くのを待ったのだった。
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