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座ったまま深々と頭を下げる母。
「こちらとしては、時間がかかってもかまいませんので、お貸ししている金額が回収できればそれでいいですから。……ただし、こちらも慈善事業ではありませんので、条件はつけさせていただきます。……その条件については、親父と相談してきますので。また明日話をしましょう。」
そう言うと、あたしの入れたお茶に手を伸ばし、一口お茶を口にする糸巻さん。
「……陽子さん、ただの興味本位なので、答えたくなければ答えなくてかまいません。今まで頑なにこちらと娘さんを接触させないようにされていたのに。どのような心境の変化が?」
確かに、借金があることは知っていた。
でも、どこからどれくらい借りてるとか、金額がどれくらいあるとかは教えてくれなかった。
関わらせてももらえなかった。
それが突然この状況。
糸巻さん以上にその答えをあたしが知りたい。
「……簡単よ。あの人が呆気なくいなくなったから。私が同じように突然死ねば、あなた方は娘の所へ返済の話をしにいくでしょう?」
「そうなりますね。」
「この子は…、変なところ無駄が嫌いでね。どんな手段であれ、手っ取り早い合理的な方法があれば、その方法を選択するわ。」
……さすが母親。
そういう性格なのは自分でも十分自覚している。
「女なら……特に若ければ身体でかなりの額を稼げる仕事、あるでしょう?……絵里ちゃんなら、間違いなく短期間でさっさと返せるって理由で、ためらうことなくその仕事を選ぶと思うの。そうさせたくないから、きちんと伝えておかないといけないと思ったのよね。こういう方法もあるって。………ただそれだけよ。」
短期間で手っ取り早く返せる仕事……
女で身体を使う……
………風俗のこと?
詳しく知らないけど、風俗なら短期間でたくさん稼げるってイメージある。
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