君が見せる刹那

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* 「――よう、(メグル)」 「――!!」  大通りから外れた裏ストリート。走るメグルの背に声をかけるスタイリッシュな中年男性がいた。同じ事務所に所属し、この地域を管轄するリーダー的役目の男だ。 「いたのかよ」  足を止めたメグルが鬱陶し気に吐き捨てて振り返った。 「いたら悪いかよ。ところで今回はどうだった?」 「……ああ、よかったよ」 「珍しいな。お前がそう言うなんて」  男はニヤリと笑う。 「そう? 芹澤さんが何であんな男が好きだったのか、正直謎だけどな。見た目は合格だけど」 「もしかして、顔がタイプだったからキスしたのか?」  どうやら目撃されていたらしい。 「……かもね」  しかしメグルは慌てない。フッと笑って指先を唇に添えた。口付けの感触が残っていた。泣きじゃくる叶を黙らせようとして、ついやってしまったのだ。そう、メグルの恋愛対象は同性だ。 (……写真以上だったな、叶さん)  実物の彼は瞳を奪うほどの美丈夫だった。ただ、そんな見た目とは裏腹に、意外に泣き虫という点がマイナスだ。 「だったら、一回ぐらいケツ提供してやれよ」  男が揶揄う。 「……バカじゃねーの?」  下世話だと、メグルは呆れ口調で返した。近い将来、叶との再会が待っているとは知らずに――。
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