「そして私は叫んだ」

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ねぇ この世界のおかしさに声を荒げる人間は、もういなくなってしまったのか。 5年前から始まった政策。不安定な世界情勢、予測不可能な競争社会を生き抜く 完全かつ完璧な存在を作り上げるカリキュラムを各教育機関に導入すること。 各科目に特化したAIが、教員として授業を執り行う。 生徒一人ひとりの腕にマイクロチップが埋め込まれ、素行を管理される。 少しでも乱れれば、強制的にソーシャル・スキル・トレーニングルームに送られる。 アイカも犠牲者の一人だった。 アイドルの存在も  ライブに行ったことも  全ては見兼ねた親から買い与えられた最先端VRによる虚像。 誰一人  何も言わず  ペンを走らせる。 洗脳されている。 こんな空間で、『「私」の心情を説明しなさい』? 滑稽だ。この世界で禁じられていることをわざわざやらせるとは。 学校という組織を守るための保険か?AIも立派になったものだ。 本当は  この狂った環境への皮肉を叫んでやりたかった。 『ペンが止まっていますよ。ハルさん。』 「・・・すみません。」 鋭い金具がヒヤリと腕に当たる。 結局  私も 叫べない。 もう少し様子を見よう。 私は服従を演じた。
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