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「そして私は叫んだ」
「ねぇ 【あれ】 やってきた?」
「【あれ】 って?」
大口を開けてクリームパンを頬張りながら、アイカが聞いた。
「ほら 昨日の国語の・・・」
「・・・あぁー 【あれ】 か。うん。一応 やってはきたよ。」
昨日 私達は現代文の授業で、奇妙な課題を課せられた。
『 「そして私は叫んだ」
「私」がどのような心情で叫ぶという行為に至ったのか。
「私」の置かれた状況や、「私」を取り巻く人間関係などに触れながら、300字以上の意見文を書きなさい。』
「でもさ」
最後の一口を放り込みながら アイカが言った。
「あの台詞以外、何もないんだよね?」
「うん。」
「おかしくない?この課題。」
そう。
私達が与えられたのは
「そして私は叫んだ」
この一文のみだった。
前後に作品がつながっているわけではない。偉人の名言でも、古い映画のワンシーンでもない。
この一文のみなのだ。
「一瞬 はっ?どういうこと?って思ったよ。」
「確かに。」
私は紙パックを傾けて、残りの紅茶を吸いきろうとしながら相槌を打つ。
「あの先生だから、きっとまた思惑があるんじゃないのかな?」
「『僅かな手がかりから全体を推測する力を養う』だっけ?何回目って感じ。」
アイカは口を尖らせていた。
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