「そして私は叫んだ」

1/5
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

「そして私は叫んだ」

「ねぇ  【あれ】 やってきた?」 「【あれ】 って?」 大口を開けてクリームパンを頬張りながら、アイカが聞いた。 「ほら 昨日の国語の・・・」 「・・・あぁー  【あれ】 か。うん。一応  やってはきたよ。」 昨日 私達は現代文の授業で、奇妙な課題を課せられた。 『  「そして私は叫んだ」  「私」がどのような心情で叫ぶという行為に至ったのか。 「私」の置かれた状況や、「私」を取り巻く人間関係などに触れながら、300字以上の意見文を書きなさい。』 「でもさ」 最後の一口を放り込みながら アイカが言った。 「あの台詞以外、何もないんだよね?」 「うん。」 「おかしくない?この課題。」 そう。 私達が与えられたのは 「そして私は叫んだ」 この一文のみだった。 前後に作品がつながっているわけではない。偉人の名言でも、古い映画のワンシーンでもない。 この一文のみなのだ。 「一瞬  はっ?どういうこと?って思ったよ。」 「確かに。」 私は紙パックを傾けて、残りの紅茶を吸いきろうとしながら相槌を打つ。 「あの先生だから、きっとまた思惑があるんじゃないのかな?」 「『僅かな手がかりから全体を推測する力を養う』だっけ?何回目って感じ。」 アイカは口を尖らせていた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!