好きな人間、ひとりだけ殺せるよ。

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「窪野か?」 「お前、ブラ一丁で何やってんだ!?」 三廻部たちは、突然現れた柚奈に驚いていた。 「え、あ、あの…これは…。」 柚奈が戸惑っていると、また誰かの足音が教室に近付いてきた。 「お前ら、ここにいたか!」 工藤だった。柚奈は咄嗟に上半身を隠しながら教卓の裏に座り込んだ。 「何だ、窪野もここにいたのか。」 工藤が窪野の元に歩き出した。 「大丈夫だったか?窪野。」 柚奈は丸まったまま震えていた。 三廻部は二人の様子を伺い、工藤を睨み付けた。 工藤が三廻部たちの間を通ろうとした時、三廻部が工藤の足を引っ掛けた。工藤はそのまま倒れこみ、机に頭をぶつけた。 「いって!三廻部!何しやがんだ!」 怒鳴り散らす工藤に三廻部は近づき、シャツの襟を掴んで引き起こすと、工藤の顔面を一発殴った。 「ちょ、明菜!?」 「どうしたの!?」 三廻部と一緒にいた2人も、急な三廻部の行動に戸惑っていた。 「窪野にあんなことしたのはテメェだろ!窪野の反応と、テメェが窪野が裸なのを不審に思ってないことでわかったよ!」 「な、何の話だ!?」 慌てる工藤に、三廻部はそっと近付いた。 「女に手を出す野郎はぜってー許さねぇ。…お前の人生終わらせてやるよ。」 三廻部は工藤の耳元で呟いた。 柚奈はその様子を教卓の裏からそっと眺めていた。 「友香(ゆか)、警察呼んで。」 三廻部が仲間の一人に指示すると、工藤は諦めたように、その場に力なく座り込んだ。 三廻部は、柚奈の顔を一瞬見ると、教室から出ていった。 「三廻部さん…。」 「今、柚奈ちゃん。あの女殺さなくて良かったって思ってるでしょ。」 ー え? ー 柚奈が振り向くと、またカエデが立っていた。 「せっかくの機会だったのに。あの男も観念したみたいだし。柚奈ちゃん、今殺したい人いる?」 ー 殺したい人、殺したいくらい憎い人…。 ー 柚奈はカエデの言葉について、ゆっくり考えた。 ー 人を殺す。…きっと自分も心を痛める。そうまでして殺したい人…。 ー 柚奈は、カエデの目を見つめ首を横に振り、握りしめていた紙をカエデに突き出した。 すると、カエデはニコリと微笑んだ。その瞬間、柚奈が持っていた紙が光の粉になって宙に消えていった。 「やっぱりね。フフフ、お友達との賭けはカエデの勝ち。…柚奈ちゃんは強いよ。」 「え?」 予想外のカエデの言葉に、柚奈はドキッとした。 「いつか、柚奈ちゃんは人を恨むようになると思ったから。…人を恨むことは簡単。だけど、そうなる前に自分を変えなきゃ。恨んだって、自分も傷付くだけだから。…また、柚奈ちゃんが困ってるなって思ったら、カエデ来るからね。」 カエデは、そう言い残すとスーッと消えていった。 「…ありがとう、カエデちゃん。」 柚奈は自分の頬をパンパンと叩いて気を引き締めると、教室の外にいる三廻部の元に向かった。
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