二人の思い出

15/15
前へ
/15ページ
次へ
「ねえパパ」 小さな指がアルバムの写真を指さして尋ねてくる。 「なんだい?」 「パパとママの写真ね、はじめのころはニコニコしてるのにー、後のほうはどーして怒ってるようなお顔なの?」 俺は料理のフライパンの火を落として、愛娘に向き直る。 「おまじないだよ」 「なぁに、それ?」 「ずうっと楽しく、幸せに暮らせるようにお願いする事さ」 「それが、怒ったお顔で、写真にうつること? わかんなーい」 俺もわからない、将来あの呪いの事を子供にどう伝えればいいのかな? 「ただいま」 「あっ、ママー、おかえり!」 「お帰り、…どうだった?」 彼女、いやママは右手親指をびっ、と立てる。 「子供二人目、ゲットだよっ」 「やったっ!」 俺たちはハイタッチして笑い合う。 娘もなんだかわからないけど、俺たちの姿を見て、笑みを浮かべる。 そうだねママ、いや、彼女は気づかせてくれたんだ。 写真の中だけじゃない、 笑顔はいつでも、目の前にあふれている。 そしてそんな風に生きて行こうとする、それが幸せなんだって。 「あれ、なんだか焦げくさくない?」 「あーっ、フライパン!」 「もうっ」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加