1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねえパパ」
小さな指がアルバムの写真を指さして尋ねてくる。
「なんだい?」
「パパとママの写真ね、はじめのころはニコニコしてるのにー、後のほうはどーして怒ってるようなお顔なの?」
俺は料理のフライパンの火を落として、愛娘に向き直る。
「おまじないだよ」
「なぁに、それ?」
「ずうっと楽しく、幸せに暮らせるようにお願いする事さ」
「それが、怒ったお顔で、写真にうつること? わかんなーい」
俺もわからない、将来あの呪いの事を子供にどう伝えればいいのかな?
「ただいま」
「あっ、ママー、おかえり!」
「お帰り、…どうだった?」
彼女、いやママは右手親指をびっ、と立てる。
「子供二人目、ゲットだよっ」
「やったっ!」
俺たちはハイタッチして笑い合う。
娘もなんだかわからないけど、俺たちの姿を見て、笑みを浮かべる。
そうだねママ、いや、彼女は気づかせてくれたんだ。
写真の中だけじゃない、
笑顔はいつでも、目の前にあふれている。
そしてそんな風に生きて行こうとする、それが幸せなんだって。
「あれ、なんだか焦げくさくない?」
「あーっ、フライパン!」
「もうっ」
最初のコメントを投稿しよう!