二人の思い出

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感激して凝視する俺に、彼女の視線が向く。 あの、愛しい視線が、再び、俺に向いている―! 「あれ、こんな時間にどうしたの、キミ?」 ああ、俺を「キミ」という呼び方、この声の調子、本当に彼女だあっ… 「なに、キミ泣いてるの? 変なのー」 その笑い顔、本当に素敵だ。でも忌まわしい呪いが… は、そう言えば呪いは「二人の笑顔」に掛けられていた筈だよな。 そうだ、俺はこの笑顔を見られなくなっても、この笑顔を無くしてはいけないんだっ! 俺は決断した。二人の写真、で無くなれば、もう呪いは積み重ならない! 「なあっ、お願いだ」 「なぁに、改まって」 「俺と…、別れてくれ!」 ぽかん、とする彼女。しかし一瞬の間を置いて、笑い出す。 「おいおい、今の笑いセンス無いぞ、ギャグとしては零点だね」 無言で見つめる俺、彼女の表情が真顔になっていく。 「冗談、でしょ」 俺は無言で首を振る。 更に大きな無表情の間ののち、 「な、何、なにぃっ、そ、れ、はぁっ?!」 どんなにわか雨もかくやとばかり、いきなり彼女は号泣しだす。 周りの歩行者が一斉に立ち止まり、こちらを見つめる。 彼女の泣き声と周囲の視線に耐え切れず、俺は背を向けて走り去る。 「こ、これが、二人の為なんだ、許してくれっ!」 いいんだ、これで! 彼女さえ生きてくれていれば!
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