1人が本棚に入れています
本棚に追加
感激して凝視する俺に、彼女の視線が向く。
あの、愛しい視線が、再び、俺に向いている―!
「あれ、こんな時間にどうしたの、キミ?」
ああ、俺を「キミ」という呼び方、この声の調子、本当に彼女だあっ…
「なに、キミ泣いてるの? 変なのー」
その笑い顔、本当に素敵だ。でも忌まわしい呪いが…
は、そう言えば呪いは「二人の笑顔」に掛けられていた筈だよな。
そうだ、俺はこの笑顔を見られなくなっても、この笑顔を無くしてはいけないんだっ!
俺は決断した。二人の写真、で無くなれば、もう呪いは積み重ならない!
「なあっ、お願いだ」
「なぁに、改まって」
「俺と…、別れてくれ!」
ぽかん、とする彼女。しかし一瞬の間を置いて、笑い出す。
「おいおい、今の笑いセンス無いぞ、ギャグとしては零点だね」
無言で見つめる俺、彼女の表情が真顔になっていく。
「冗談、でしょ」
俺は無言で首を振る。
更に大きな無表情の間ののち、
「な、何、なにぃっ、そ、れ、はぁっ?!」
どんなにわか雨もかくやとばかり、いきなり彼女は号泣しだす。
周りの歩行者が一斉に立ち止まり、こちらを見つめる。
彼女の泣き声と周囲の視線に耐え切れず、俺は背を向けて走り去る。
「こ、これが、二人の為なんだ、許してくれっ!」
いいんだ、これで! 彼女さえ生きてくれていれば!
最初のコメントを投稿しよう!