二人の思い出

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彼女は俺を引きずって行き、ほど近い小さな公園のベンチに座らせる。 口を開こうとする前に、彼女はゴツン、と俺の脳天に拳骨をくらわせる。 「いてっ」 な、なんで殴られるんだ?! 「何で勝手に、別れるなんて話になるわけ?」 え、えっ? 「わたし、『もう一度、やり直したかった』ってちゃんと言ったよね、聞いたでしょ?!」 な、なにが、どうなってるんだ? 「…はあ、その顔、やっぱりわかってなかったんだね」 全く事情をのみこめない俺の肩に、彼女は手を置いていう。 「私が覚えている事を言うから聞いてね」 うなずくしかない。 「キミは交差点で信号無視の車にはねられて死んだんだよ」 えっ?! 「なんでか『俺と別れてくれ』とか変な事を言った後でね」 それって、さっきの?、で、でも、いま俺は生きているけど…?? 「私がわけわからず写真を見て泣いていると、『写真の精霊』が現れたんだ」 写真の…? はっ! そ、そうか!! ひたすら訳が分からなかった俺にも、『写真の精霊』という言葉でピンと来るものがあった。 彼女もタイムリープしたんだ、事故の前の時間に。 俺を事故から救うために―! 「やっと気づいたようだね、もうっ」 「二人の別れは、事故は、回避されたんだなっ!!」 俺は立ち上がり、両腕を空に突き上げる。 やったーっ! …と叫ぶ俺のみぞおちに、 ドスッ、と彼女の拳の一撃が入る。 ぐっ―、しゃがみ込む俺の顔を彼女は覗き込む。 「喜ぶ前に、反省っ!」 えっ、何を…?
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