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アルバムというものは昔の、たとえば誕生写真からなど過去から始まるのか、と思っていたが、
そこにあったのは、事故の二日前に写した、二人の最後の写真だった。
俺はページをめくり過去にさかのぼっていく。
台紙一杯に貼りまくられた、という表現そのものの、彼女と俺の笑顔たち。
二人の出会い以降の写真で分厚いアルバムの、半分ほどが埋まっていた。
どれだけ写真好きなんだよ…、俺は涙を流して苦笑いする。
そして三年前の、初デートの写真。これ以前に二人の写真は無い。
しかしまだ、アルバムは何十ページも残されている。
この先は彼女の幼少期とかか?
ページをめくった俺は、固まってしまう。
写っているのは、どう見ても満面の笑顔の、いつもの彼女と俺だ。
しかしこんな写真、撮った覚えが全くない!
それらは全体的に色が茶色ばんでくすんでいる。
アルバムの各ページには、きっちりと写真が六枚ずつ貼ってある。
まてよ、こんな雰囲気の写真、どこかで見たな…
そうだ、実家のアルバムで見た両親の若い時の写真のような感じだ。
まだ『カラー写真』とわざわざ言ってたっけ、何十年も経つとこんな色になってしまうのを見た記憶がある。
アルバムの写真の貼り方もいかにも昭和な構成に見える。
でも、そんなものに何故、彼女と俺が写っているんだ?!
見ると二人の背後に『TOKYO 1964』とのポスターが見える写真がある。
えっ、東京オリンピック、それも前の!
たしか昭和でいうと三十九年だったか?
すなわち、これらの写真は五十年以上前に、撮られたものなのだ。
そんな前に、彼女と俺の写真?!
一層わけが分からなくなる。
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