二人の思い出

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はっと、俺は声のほう、右後ろを振り返る。 そこの壁には彼女と俺の写真パネルが掛かっていたが、 その画面が揺らぎ、いつしかぼやけたモノトーンの老人の顔に変わる。 一瞬俺は警戒するが、明らかに怪しさや敵意は無いようだ。 「あんたは、誰だ?」 「今まで写真の発明、発展、制作や使用に関わってきた者たちの思念の集積、というか…」 老人の顔はちょっと困った様になってから言う。 「まあ、一言で表すなら、『写真の精霊』とでも言っておこうか」 …せ、せいれい? 俺は言葉につまる、どう対応していいんだ、これ? しかし『写真』という言葉にはっとする。 「そ、そんならっ、写真の事は何でも知っているんじゃ?! この最後の、いや『最初の写真』、この意味を知っているのか?!」 「この国に初めて写真が伝えられて160年以上になるのだが…」 いきなり爺さんの昔語りか?、俺はちょっとげんなりしかけるが… 「その写真は、実はこの国最初の愛する二人同士が撮影されたものの一つなのだ」 「え、何かすごいものなんだ」 喜びかける俺、しかし疑問が浮かぶ。 「いや、でもなんでそれが破かれたりしてるわけ?」 「その幸せな姿を妬み、呪いをかけたものがいたのだ」 呪い?! どきりとする言葉だ。 「誰なんだよ、それ」 「『お葉』という人物だ」
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