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「彼女と俺は、生まれ変わって付き合うたびに、そいつに呪い殺されてきたのかよ」
悔しさがこみ上がってくる。
「明治時代はあなたが戦死し、大正時代は彼女が病死し、昭和時代はあなたが事故死したのだ」
「で、今度は彼女が事故死ってか、ふざけるなっ」
「その『お葉』って、生まれ変わっても何代にも渡って呪い続けるなんて、魔王か何かかっ!」
俺は写真の精霊に文句をぶつけるより他になかった。
「いくら霊感が強くても、人の呪いが百年以上続くことなどない」
困った顔で言う老人。
「で、でも、現に彼女は死んで…」
「彼女の場合は条件が悪かったのだ」
精霊は俺をなだめるように続ける。
「『写真の二人の幸せな笑顔に呪いあれ!』、これが『お葉』の呪いの言葉だ」
「ほんとに病んでるな」
「実は『お葉』の呪いは、百年をとうに過ぎて消滅寸前までになっていたのだ、だが…」
「それが、なんで消えなかったんだ?」
少し言いよどむ写真の精霊。
「…うむ、昭和以前よりも、ケタ違いに多い枚数の写真をあなたの彼女は持っていただろう」
俺はアルバムを見つめる。溢れんばかりの写真たちを思い返す。
「そうだけど、何だって…」
しかしはっと気づく。
「え、もしかして、写真の笑顔の数だけ呪いが掛け算されていく、とでもいうのか?」
うなずく精霊の顔。
「だから弱まったはずの呪いが、枚数の分強くなってしまった?!」
「その通りなのだ」
「そんな馬鹿なっ、そんな事で死ななきゃならないのかよ、この世には神も仏も無いのかよ、畜生!」
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