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十時 二十分 新潟市 某所
小野は店長から教えられたアパートの前へ自前のSUVを停めた。二階建てのうち一階の隅が吉田の部屋らしい。駐車場には吉田の赤い車が停まっている。
「ここだな」
備え付けられたインターホンを鳴らす。すると擦れた女性の声が聞こえた。
「……はい」
恐らく、吉田の言っていた”彼女”だろう。
「あ。すいません。吉田クンのバイト仲間なんですが、吉田いますか?」
「いません」
「お出かけ中ですか?」
「……」
「どこに行ったとか、いつ頃戻ってくるとか知りません?」
「……」
長く続く沈黙に、嫌な予感が働く。「じゃーどうしましょうかねぇ」と言いながら、吉田の携帯へ電話を掛けてみた。すると、部屋の中から着信音が聞こえる。
吉田は 中にいる……?
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