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「吉田!!」
思わず小野が叫ぶ。その瞬間、女はギョッと目を見開くと扉を勢いよく閉めた。小野が急いでドアノブを回すも、既に鍵をかけられてしまったようだ。
(このままじゃ、吉田がマズい……!)
小野はアパートの側面に回った。部屋の窓は全て施錠されていて入れない。何かないかと辺りを見渡すと、汚れた空の鉢植えが落ちていた。小野が勢いよくそれを窓に投げつけると、ガラスはあっけなく大穴を開けた。中の女が驚いている。
「吉田! おい、吉田ッ!!」
すかさず部屋へ入り込むと吉田へ駆け寄った。むき出しにされた上半身には、打撲や強く絞めた跡が青黒く残り、いたるところに鋭利な切り傷がつけられている。
「……先、輩……?」
弱々しい声が吉田の口から漏れ出る。
「しっかりしろ! ここから出るぞ!」
小野が吉田の肩へ手を回そうとした瞬間、背後から強い殺気を感じた。慌てて振り返ると女が包丁を振りかざしていた。小野が身体を翻す。女が勢いよく振り下ろした包丁がフローリングに突き刺さり、同時に女の血走った目と視線が合った。
(殺される……!!)
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