第一話 再会

1/4
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/169ページ

第一話 再会

   今日も元気にノブオは社用車であるシルバーの軽をご機嫌で走らせていた。  片側二車線の道路から一本左に入ると、車は閑静な住宅街の小道を慎重に進む。 「フンフンフーン……あっ、あの家だな」  わりと新しいマンションや家々が並ぶ中、その家はあった。  二階建ての一軒家で小さな庭があり、よくある灰色のコンクリート塀に囲まれている古い感じだが普通の家だ。  ノブオは塀の前で車を止め降りるとバックドアを開け、段ボールを取り出す。 「スティーヴン・イヤマ様……やばいな、外国人か? 俺、英語できねぇのになぁ……」  レンズの大きなフレームを上げ下げしながら目をぎょろつかせるノブオは、ため息をついた。 「はぁ、まぁなんとかなるか」  気を持ち直し、箱を小脇にかかえる。ボールペンで髪の薄い頭を掻きながら、コンクリート塀にある門扉を手前に引いた。  さびつき加減の門はきぃっと耳を刺した。  玄関前で呼び鈴を押す。ピンポーンという音がこちらにも聞こえた。  だが、反応がない。もう一度押してみる。ピンポーンとむなしく響くばかりだ。 「うーん、留守か。次のキャテリーヌちゃんの散歩の時間に間に合わないといけないからなぁ。うん、じゃぁ散歩の後にまた来るかな。不在票は面倒だし、後で、もしいなかったら書くかなぁ……えっ、英語で書くのか? ひらがな? うーん、んっ? あっ!!」  ぶつぶつ言いながら門扉を出たところでノブオは声を上げた。
/169ページ

最初のコメントを投稿しよう!