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第一話 再会
今日も元気にノブオは社用車であるシルバーの軽をご機嫌で走らせていた。
片側二車線の道路から一本左に入ると、車は閑静な住宅街の小道を慎重に進む。
「フンフンフーン……あっ、あの家だな」
わりと新しいマンションや家々が並ぶ中、その家はあった。
二階建ての一軒家で小さな庭があり、よくある灰色のコンクリート塀に囲まれている古い感じだが普通の家だ。
ノブオは塀の前で車を止め降りるとバックドアを開け、段ボールを取り出す。
「スティーヴン・イヤマ様……やばいな、外国人か? 俺、英語できねぇのになぁ……」
レンズの大きなフレームを上げ下げしながら目をぎょろつかせるノブオは、ため息をついた。
「はぁ、まぁなんとかなるか」
気を持ち直し、箱を小脇にかかえる。ボールペンで髪の薄い頭を掻きながら、コンクリート塀にある門扉を手前に引いた。
さびつき加減の門はきぃっと耳を刺した。
玄関前で呼び鈴を押す。ピンポーンという音がこちらにも聞こえた。
だが、反応がない。もう一度押してみる。ピンポーンとむなしく響くばかりだ。
「うーん、留守か。次のキャテリーヌちゃんの散歩の時間に間に合わないといけないからなぁ。うん、じゃぁ散歩の後にまた来るかな。不在票は面倒だし、後で、もしいなかったら書くかなぁ……えっ、英語で書くのか? ひらがな? うーん、んっ? あっ!!」
ぶつぶつ言いながら門扉を出たところでノブオは声を上げた。
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