第五話 メリーさんとツメ

3/3
前へ
/169ページ
次へ
 あきらめてくれたのだな、とノブオがほっとしたその時…… 「えいっ!!!」  急に振り向く敏也は、座っていたノブオの両肩を正面から力強く押した。 「ぎゃっ!!!」  何事かわからないノブオはそのまま後ろにでんと転がる。ノブオの足の裏が天井を向いた。 「手がだめなら足だな!!! 覚悟ぉぉお!!!」  叫ぶ敏也はノブオの足から靴下をはぎ取り、放り投げた。 「なにっ!? や、やめろ!!!」  ノブオは必死に足をばたつかせる。しかし敏也の力は強かった。 「おとなしくしろ!!! でないと俺は何をするかわからんぞ!!! ノブオ!!! ケガだけじゃすまさねぇからな!!!」  ものすごい剣幕と不穏な発言に、ノブオはぴたりと動けなくなった。 「なんだ……足のつめ、すげぇ長いじゃねぇか。ついでだから全部切ってやるよ。ほら、あぶねぇからちゃんと座れ」  天井に両足の裏を向けひっくり返っていたノブオは、上体を起こして再び体育座りの姿勢をとった。  そして促されるまま片方の足をのばすと、敏也はそっと持ち上げその足のつめを切り出した。  パチィン……パチィン……  静まりかえった部屋に、つめを切る音だけが響き渡る。  意外にも敏也の仕事は丁寧で、ノブオの足はすっきりとするのだった。
/169ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加