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第七話 始まりと儀式
敏也が二階を確認して家中の照明を消し居間に戻ってくると、二人は風呂場へ向かった。
「いいか? 俺が儀式を進めていくから、ノブオは静かにコップを持ってついて来いよ! 俺が押し入れの上の段でノブオは下の段だからな! いいな! なっ!?」
浴槽に水をためながら敏也はしつこく念を押す。
ザーッと水が底にあたる音が響いてくる。
「わかってるから!! 何度めだよ、もう……」
風呂場の外から敏也の背を眺めるノブオは、一度も置くことなくずっとコップを握りしめており、腕は疲れていた。イライラしつつため息をつく。
浴槽に10センチほど水がたまると、敏也はきゅっと蛇口をひねり止めた。
「これくらいでいいだろう。じゃぁノブオ、始めるからな」
「お、おう……」
敏也は下に置いていたメリーさんを拾い、そして見つめ話しかける。
「最初の鬼は敏也だから。最初の鬼は敏也だから。最初の鬼は敏也だから」
言い終えるとメリーさんを浴槽に入れた。
ピンクのドレス、ざんばらの髪……全てがぐっしょり濡れてしまった。
メリーさんをそのまま浴槽に残して風呂場の最後の照明を消すと、包丁を持った敏也は居間に戻る。ノブオも敏也の後を追った。
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