第七話 始まりと儀式

1/3
前へ
/169ページ
次へ

第七話 始まりと儀式

 敏也が二階を確認して家中の照明を消し居間に戻ってくると、二人は風呂場へ向かった。 「いいか? 俺が儀式を進めていくから、ノブオは静かにコップを持ってついて来いよ! 俺が押し入れの上の段でノブオは下の段だからな! いいな! なっ!?」  浴槽に水をためながら敏也はしつこく念を押す。  ザーッと水が底にあたる音が響いてくる。 「わかってるから!! 何度めだよ、もう……」  風呂場の外から敏也の背を眺めるノブオは、一度も置くことなくずっとコップを握りしめており、腕は疲れていた。イライラしつつため息をつく。  浴槽に10センチほど水がたまると、敏也はきゅっと蛇口をひねり止めた。 「これくらいでいいだろう。じゃぁノブオ、始めるからな」 「お、おう……」  敏也は下に置いていたメリーさんを拾い、そして見つめ話しかける。 「最初の鬼は敏也だから。最初の鬼は敏也だから。最初の鬼は敏也だから」  言い終えるとメリーさんを浴槽に入れた。  ピンクのドレス、ざんばらの髪……全てがぐっしょり濡れてしまった。  メリーさんをそのまま浴槽に残して風呂場の最後の照明を消すと、包丁を持った敏也は居間に戻る。ノブオも敏也の後を追った。
/169ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加