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暗い廊下を五歩ほど進んで、左手の居間に通された。中はやはり散らかっていて足の踏み場もない。
「すまんな、物が多くて……」
言いながら足をガッと大胆に動かし、敏也は物をどかしていく。ガラガラッ、カラカラッと空き缶や雑誌が散らされると申し訳程度の床が現れた。
「あぁ、いやいや……どうも……」
そこにノブオは座り、自らも手で少々物をよける。その間、どこへ行ったかと思ったら、敏也は冷えたお茶のペットボトルを二本持って戻ってきた。
「はい、お茶」
「おぉ、ありがとう。ちょうど、のどが渇いてたんだ」
差し出されたお茶を受け取ると早速のどを鳴らして飲む。フタをカチャカチャ閉めると、ノブオは再び口を開いた。
「ふぅ、おいし……ところで敏也は今、何してるんだ?」
「あぁ……実は今、無職なんだよ。三年くらい前から体調崩してな。離婚して妻も出て行ったし、子供はもう独立して寄り付きもしないし……今はこの家で一人、貯金を崩しながら暮らしているよ……」
寂しそうに言ってノブオの前に座った敏也もごくりとお茶を飲む。
「そうだったのか。俺はずっと独身だし、アパート住まいだからなぁ。敏也とはまた全然違う人生だな。同じ小学校出身でこうも違うとは、はっはっ、はぁ……」
笑ったつもりが最後に大きく息を吐いて、ノブオはお茶のフタを見つめる。
変な沈黙が一瞬時を止めた。
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