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第三話 会いたい
「野分倫子……? うーん、誰だったかなぁ。全然思い出せん」
悩むノブオは全てのクラス写真、一人一人の顔写真を丁寧に見ていくが野分倫子の顔も名前も見つけることはできなかった。
「なっ? いないだろ? おかしいんだよ。倫子は絶対にいたはずなんだ!!」
卒業アルバムをノブオのおでこにひっつくようにして一緒に眺めていた敏也は叫んだ。
ノブオの耳にキーンと嫌な音が響く。
「そう言われてもなぁ! 六年のクラス写真にはどこにもいないぞ? 俺も全く覚えてないし……なんか習い事とか、別のところの知り合いじゃないか?」
アルバムを閉じ、敏也の気迫に押されながらもノブオは言った。
正直、そんなに野分倫子のことに興味はない。それよりも長いこと卒アルを見せられていたことによる疲れの方がはるかに勝っている。
「違う!! 絶対に同じ小学校だったし、同じクラスにいたはずなんだ!!! 俺は、俺は……倫子が本当にいたことを確かめたいんだ。倫子に、倫子にもう一度会いたいと思っている……」
叫んで、そして敏也はうなだれた。膝を抱えてうずくまる。
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