破綻

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「皇太……」  僕は、何を言えるだろう。目の前で、取り乱して涙を流す親友に、僕は何ができるのだろう。わからなかった。僕はただ、彼を抱きしめた。震える皇太の体の熱が僕に伝わってくる。彼はここに生きていた。けれど、どこへ行けばいいのかわからなくなっていた。そして僕は、彼に何も示してあげることができなかった。 「なあ、何があったんだよ。いや、いいよ。何にもないから怖いんだもんな。逃げらんないんだもんな、自分からは。なあ、前みたいに僕んち遊びにこいよ。僕は、皇太のこと好きだよ。大丈夫だからさ。遠慮してたんだろ?お前優しいもんな。僕に弱い姿とか見せたくなかったんだろ、カッコつけめ」  僕の胸の中で女の子みたいに皇太はしばらく泣き続けた。けれどいつの間にか笑い出して「なんだよお前」と僕のことを強く抱きしめた。 「なんで怒んないんだよ。なんでこんな最低な俺のこと、嫌いになんないんだよ。覚醒剤してたんだぜ?友達の女食ってさ、めちゃくちゃして、お前のこと避けて。なのになんで俺のこと好きだとか言えるんだよ。馬鹿かよ」 「そうかもね。僕も結構ドライだから。別に僕は皇太に迷惑かけられてないし。今のところね」 「……中也も結構ひどいやつだよな。意外と倫理観ガバガバ?」 「皇太と友達なんだもん、そりゃそうよ」 「どういう意味だよひっでー」 「てか今日鍵かかってた気がするんだけど」 「俺お前んちの合鍵結構前から持ってっから」 「まじかよほんと気持ち悪いなお前」 「まあね。てか煙草吸っていい?」 「ダメっつってんだろ毎回、そと行けそと」  僕らは酔っ払ったように笑いながら階段を降りて足羽川まで歩いた。僕は皇太から煙草をもらって初めて吸ってみたが、思わずむせてしまって盛大に馬鹿にされた。腹が立ったのでもう一本もらったが、結局むせて笑われた。
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