出会い

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 四月も終わりに近づいた、ある晴れた日の午後。桜はすっかり散ってしまっていたが、春らしい暖かな過ごしやすい日が続いていた。  そんな陽気の中、大学に入学したばかりの梅谷沙良(うめたにさら)は、広いキャンパスの一角で、ナンパされていた。 「とりあえず食事だけ、ね? 新入生と仲良くなりたいだけなんだよー」 「そういうのは、ちょっと……」  ナンパしてきたのは、沙良より二つ上の三回生で、可愛い子に手当たり次第に声をかけるナンパ男として、学内で有名だった。  沙良は、美人の部類だった。綺麗な黒髪ロングヘアで、顔もスタイルも整っていた。しかし、沙良は自分に自信が無く、ネガティブな性格だった。実際はかなりモテていたのだが、その性格と男側も沙良を高嶺の花扱いで遠巻きに見る者が多かったせいでそういう自覚がなかった。さらに、男性恐怖症の気があったせいで、男と付き合ったこともなかった。 「ちょっと、嫌がってるじゃない。やめなさいよ!」  ナンパ男にしつこく言い寄られ、困り果てていた沙良の前に救世主が現れた。ショートカットのその女は、沙良とは正反対の快活そうな女性だった。  邪魔が入ったことで、ナンパ男は渋々去って行った。 「あの……ありがとうございます」  沙良は、救世主の女に小さな声でお礼を言った。すると、彼女は沙良の顔を覗き込んだ。 「大丈夫ですか? 私、一回生の陽名杏莉(ひなあんり)です」 「一回生の梅谷沙良です」 「同期じゃん! よろしく、沙良」
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