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遠くへ、二人で。
季節が巡り、無事に二人とも一回生を終え、長い春休みの真っ只中。
ある日の午後、沙良が部屋でのんびり過ごしていると携帯電話が鳴った。知らない番号だったが、なんだか胸がざわついて、恐る恐る電話に出た。
『星ヶ丘総合病院です。梅谷沙良さんですか?』
急いで駆け付けた病院の診察室の一角に、左手首に包帯を巻いた杏莉が座っていた。その顔は、今までに見たことがないほど白く、疲れ果てていた。
「沙良……ごめんね。親戚に連絡されるのが嫌で、沙良の名前出しちゃった」
沙良は、何も言えずに首を横に振った。泣きそうな顔をしていた沙良を見て、杏莉は、弱々しく笑った。
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