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【<裏話>金龍の面倒な後始末】
黒龍の夢別邸。金色に輝く龍は、魔法で眠らせていた白龍族の子を起こした。
『おはよう、白龍族の子』
『うーん……わっ! き、金龍様!?』
スノウはパッと起き上がると、ビシッとお座りした。
『あのね……急で申し訳ないんだけど、ツバサには元の時代に帰ってもらったんだ』
『えっ、それは急ですね。戻る前に挨拶したかったなぁ』
『ごめんね。緊急事態だったんだ』
『いいえ、金龍様。もったいないお言葉です』
『ちょっと問題が起きてね。原因がわからないんだ。しばらくは、ツバサをこの時代に呼べないと思う』
『はい、わかりました。金龍様がそう言うんじゃ、よほどの事なんですね。僕はアラゴニアの王都に戻ります。でも、ユイは……』
『うん……気が重いよ』
◇◇◇◇◇
次に、金龍はベッドでぐっすりと寝ているユイを起こした。
『ユイ、おはよう!』
『う、うーん。あら、金龍様。なんだか、よく眠れたわ』
ユイは伸びをして起き上がると、裸で寝ていたことに気がついて、急いで布団に丸まった。
『あのね、ユイ。落ち着いて聞いて欲しいんだけど、ツバサを元の時代に戻したんだ』
『えっ! つ、ツバサ、帰っちゃったの?』
『うん。緊急事態だったんだ。ゴメンよ』
『う……』
『う?』
『う、うわーん!』
ユイが大きな声で叫ぶと、大きな瞳から大きな涙が落ちた。
『ゴメンよ、ユイ』
『何で、最後に、ひ、一言ぐらい、は、話を、させてくれないのよ! グスッ』
ユイは泣きながら怒っている。
『だってさ、そうすると、ユイは引き留めるでしょ? 時間がなかったんだ』
『それで、緊急、事態、ヒック、どう、なった、のよ!』
『うん。ツバサを元の時代に送り返したら、大丈夫になったよ』
『そう……よ、よかったわ。うわーん!』
しばらくユイは泣き続けた。金龍が軽く元気が出る魔法をユイにかけたようだ。それでも、ユイは深く落ち込んでいる。
『ツバサを元の時代に送り返したら、時空の揺らぎは止まったんだ。この時代が崩壊することは避けられたけど、そんな事、ユイには関係ないもんなぁ』
『うう……ツバサ……もう会えないの……』
『ごめんよ。僕の魔法が中途半端だからダメなんだ。時空を超える魔法は、しばらく封印して研究してさ、大丈夫になったら、またツバサを呼ぶから』
『グスッ……わ、わかったわ』
『ユイを悲しませちゃって、本当に申し訳ないよ』
しばらくして、ユイは泣き止んだ。その後、ユイは黒龍の夢の受付に行ってコルフ村に戻ることを伝えた。
あらかじめ、金龍は霊峰フジの銀龍にユイを迎えに来るように伝えていたようだ。銀龍は黒龍の夢別邸の中庭に降り立つと、ユイを乗せて、コルフ村まで飛んで帰った。
その間、ずっとユイは泣き顔だった。
『ゴメンよ、ユイ』
金龍も悲しそうにつぶやいた。
◇◇◇◇◇
金龍はアーセニアの地下にいる大黒龍に会いに行った。
『おーい、大黒龍! 生きてる?』
『これはこれは、金龍様。生きておりますよ』
小さな金龍が、小山のような大黒龍の顔の前に浮かんでいる。
『急なんだけどさ、ツバサを元の時代に送り返したんだ』
『承知しました。人間たちには、何か伝えますかな?』
『ううん。できる限り、龍は人間たちに関係しなくていいよ。後は任せたから』
『ホッホッホ。承知しましたぞ』
『何かあったら、大黒龍や銀龍ちゃん達がなんとかしてね。じゃ!』
『ふ~む。金龍様は、相変わらずせっかちですなぁ』
大黒龍の巣の奥にある飛龍専用の縦穴から、金龍は外へ飛び出していった。
◇◇◇◇◇
金龍はアーセニアからアラゴニア方面を目指して飛行しながらつぶやいた。
『さてと……僕もコルフ村に行くか。ハヤトに状況を説明しておこうかな。ユイを慰めてもらわないとな』
空中で急に停止すると、首をかしげながら再び独り言をつぶやいた。
『それにしても、なんで時空が揺らいだんだろう? 二人を時間移動させて、すぐの時は何も問題なかったのに。確か、二日目の夜ぐらいから、揺れ始めたんだよな。どういう事なんだろう? もっと時間をかけて、時空を超える魔法を研究しなきゃダメだ』
悩んでいる様子の金龍が、大きなあくびをした。
『あーあ。でも、何か……すごく……眠いな。短い期間に、何回も時空を超える魔法を使ったからだろうな。先に霊峰フジの家で、少し寝てからにしよう! コルフ村には、後から行けばいいや』
◇◇◇◇◇
金龍は霊峰フジの頂上にある研究施設の中に戻ると、疲れを癒すために少しだけ寝ることにした。
研究施設の2階。事務室内にある大きなガラスケースの中に金龍は飛び込んだ。その中でペタッと伏せて丸くなった。
『あ~眠い。おやすみなさ~いっと』
すぐに金龍は、スヤスヤと寝息を立て始めた。
しかし、そのまま15年以上もの間、グッスリと寝てしまうのだった。
※ 大学院生のツバサの物語は、ここで終わりです。
※ ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
※ この先は、主人公が変わり、別の物語に続きます。
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