3時間目

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3時間目

授業が再開してからはひたすら秒針の音と、黒板とチョークがぶつかり合う音を聞くだけ。 それくらい数学は暇だ。というより、やる気がない。やる気ZERO。 あの後、今の授業内容を軽く説明してくれたが意味がわからなかった。 難しいし、XとかPとかYとか絶対今後の人生で使わないし。 いっその事、そういう文字は「あ」、「い」、「う」でいいじゃん。って、そういう問題じゃないかっ。もぉ! 隼人くんったら天然! かっわいいっ! とりま、数学なんて足し算と掛け算と引き算と割り算が出来りゃいんだよ。 俺、九九を6の段まで言えるし。 ーーキーンコーンカーンコーン。 ダラダラと文句を心の中で述べてると予鈴がなり、先生が時計を確認する。 俺は神が舞い降りたかのような目で先生を見つめた。 これで地獄の数学から解放される。 「っと、ここまでノートとったら終わり」 「起立! ありがとうございました!」 『ありがとうございました!』 先生の合図から少しの間が空いてから終わりの挨拶をし、休み時間に入る。 俺も元気な声で挨拶をし、先生はせっせと荷物をまとめ次のクラスに行く準備をしていた。 「隼人は放課後補習な? 数学の資料室へ来いよ」 荷物をまとめながらさも自然に、それはもう息を吸って吐くという動作くらい自然に俺に告げた。 「はぁ!? なんでっ!?」 「じゃ、また」 俺の疑問に答える間もなく逃げるように教室から立ち去っていく。 まじかよ! 後半ちゃんと聞いてますよ風にしてたじゃん! あくまでも聞いてますよ風だけど! 「さっくーっ! さっくーっ!」 教室から出た先生を結構な人数の女子が追いかけて行った。 廊下にもたくさん出待ちがいる。 授業が終わってそんな経ってないのに行動力が素早いこと。 購買の焼きそばパン争奪戦で役立ちそう。俺の前の高校メロンパン争奪戦えげつなかったな。 男子校なのにメロンパンって、なんか可愛いなぁ! おい! 「さっくーって付き合ってる人いるんですか?」 「ん~……いないな~」 「じゃあ、好きな人は?」 「ん~……どうだろ?」 「いるんだぁ!」 恋バナか……ほんと女子ってそういうの好きだよな。 俺は恋とは無縁の人間だ。 女友達だって超仲良し! ってやつはいないし、彼女だって出来たことない。 モテるのに……なんでかわかんないけど…… そういや、あいつも中学の時から彼女いるっていう噂聞かねぇなぁ。さっさとつくってかわい子ちゃん達から見捨てられればいいのに。 「ーー隼人! 何ぼーっとしてんの?」 「あ、わりぃわりぃ……えっと?」 声をかけられ前を見ると前の席に座ってる、明るめの茶髪で俺よりも背が高い男がニッと白い歯を見せて笑った。 「俺の名前は、城木(しろき)颯太(そうた)。よろしくな」 「おう! よろしく!」 颯太は俺に負けず劣らずイケメンだった。 雰囲気だけ見ると性格も良さそうで話しやすそうだし、仲良くなれそう。 「なあ隼人! 外見てみろよ」 「ん?」 興奮気味に颯太が言い外を見てみると、誰かの車が止まっていて、学校の門の前には遠くから見てもわかる美人な女の人が立っていた。 あ、タイプだわ。 って言っても、俺のストライクゾーン銀河レベルで広いからなぁ。 「あの人めっちゃ美人じゃん」 「だよな! 俺も思った!」 颯太と俺は発情期の動物のように目をギラギラ輝かせながら語ってると、見覚えのある人が美人さんに近づいてった。 「んあ? 先生?」 先程まで授業をやって、女子に囲まれていた、かの有名な優作先生が校門にいる女の人のところに駆け寄り、なにやら話しをしている。 何話してんだろ? さすがにここまでは話してる内容が聞こえるわけでもなく、様子だけみると揉めてるような感じだ。 「誰? あの人!」 「彼女かな?」 「でも、さっき付き合ってる人はいないって」 「じゃあ、なんなの!?」 大勢の女子が嘆いているのが嫌でも視界に入ってくる。 あれだよな。人気俳優が結婚した時のSNSの荒れようみたい。 だーかーら、みんな俺にすればいいのに……そうすればラブアンドピースで解決するはずだからな(イケボ)。 「隼人の頭って平和だよなぁ」 「ふぁっ!?」 颯太は俺の心を読んだのかとても蔑んだ目で見ていた。 その目は道端に落ちてる虫やゴミクズを見て「うわっ、汚っ!」 とでも言いたげな目だ。 なんだよ、その目は! それに、平和っ!? 頭が平和ってなに!? いい事だろ! あと、こいつ超能力でもあんのかよ!? 収拾がつかないツッコミいれさせるなよ! 「超能力なんてねぇよ。それとツッコミいれなければいいじゃん」 「やっぱあるじゃん!?」 そうこう話しているうちに、外にあった車はどこかへ行き、チャイムがなる直前だったから席に着いた。 今日のふしぎ発見。颯太は意外と毒舌で、超能力を持っている。 ほぼ初対面の俺を小馬鹿にするとか……そういう奴嫌いじゃないぞ。
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