4時間目

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4時間目

1日は意外とあっという間で、もう放課後になった。 転校初日ということもあり、学校探検とかクラスの人の名前と顔を必死に覚えていたらいつの間にか全授業終わっていた。 「隼人。一緒に帰ろーぜ」 今日1日で颯太をはじめクラスメイトともめちゃくちゃ仲良くなり、颯太が俺に10年来の友達のようなノリで誘ってくれた。 女の子と一緒にいるのも楽しいけど、男友達も捨てたもんじゃねぇよなぁ。 承諾の言葉が喉元まで出てきそうだったが、なんとか飲み込んだ。 今の俺にこの誘いを承諾できる立場ではないことを俺なりにわかっている。 なぜならーー。 俺は忘れていなかった。 放課後に補習があることを…… 「ごめん、今日補習……」 眉を下げ拝むように手を合わせて申し訳なさMAXを顔と行動で精一杯アピールしながら断った。 せっかく誘ってくれたのに。すまない。 「あははっ! そうだっけな! じゃあ、先帰ってるから! じゃあな平和頭!」 颯太は大声で笑い飛ばし、手を振って帰って行く。 「平和頭ってなんだよ!?」 教室を出ていく颯太に聞こえるように大声で返事をしたが、あいつには届いたのか届いてないのかそれ以上は帰ってこなかった。 「颯太くん! カラオケ行こ?」 「カラオケかぁ!」 「隼人は?」 「転校初日っから補習だってさ!」 「あははっ! そうだっけね! ある意味伝説!」 やはりあの顔だとモテるのか、女の子達とキャッキャウフフしながら帰っていく声が聞こえる。 新たな敵が誕生しそうな予感……ま、いっか。 颯太よりも俺には最大の敵が待ち構えているからそっちを先に倒さねぇと。 RPGの勇者がラスボスを直前にしてるような意気込みを心の中で呟き、前を見据えた。 じゃあ、そろそろ行きますか。 ピコンッ。 胸ポケットの中に入っていた携帯が空気を読まずに間抜けな音を鳴らした。 今めっちゃかっこいい感じだったのに。雰囲気壊すなや。 画面を開くと颯太からのメールがきていた。 そういえば、連絡先交換したっけ。 『10分間待ってやる』 そ、颯太……お前ってやつは…… カラオケに行ったと思っていた颯太からのメッセージを見て、物凄く感動した。 これ見たら全米が泣くぜ。 10分後にバルスって言ってやるから待ってろよ。 「うおおおおおおおおおっ!!」 俺は叫びながら急いで先生のいる数学の資料室へと走っていった。 すれ違う人達が不審な目で見ていたが、気にしない気にしない。 ただ、不審者として訴えられないかがちょっと心配だったが、気にしない気にしない。 数学の資料室へ行き勢いよく扉を開ける。 資料室はこの教室の真上にあるため、階段を上がらないといけなかったが今の俺には階段なんて平地となんら変わらない。 奇跡的に迷わなかったし。 「隼人遅いぞ」 もう既に居た先生が鋭い視線を飛ばし、一瞬怯む。 普段優しい人や美形が睨むと軽くでも相当な威力がある。 だが、今の俺は天下無敵、国士無双の勇猛無比。 友情の力はそのくらい強いのじゃ! 「俺様最強!」 「じゃあ、このプリントやれ」 空気の如く無視され、プリントを渡された。 こんにゃろ……こいつの本性(今の姿)を女の子達に見せてやりたい。 心の中真っ黒すぎだろ。煤になっちまえ。煤になって某アニメの婆さんの元で働け。 「はい! できた!」 「はやっ! そして全部間違ってる。っていうか、何語? 少なくとも日本語じゃないよな?」 プリントを受け取って10秒ぐらいで5問くらいあった数学の問題を終わらせた。 こいつは全部間違ってると言ったが、これは隼人語で書いたためこいつが読めるわけがない。 つまり、一概に間違ってると決めつけるのはよくないと思う。 と文句を言ってやりたかったが、今の俺には先生を構ってやるほど暇ではない。 なので、隼人語を使わざるを得なかった真意を伝えるとするか。 「だって、はやく終わりたいんだもん! ふへへへへっ♪」 俺のニヤケ面に先生は引き気味に聞いてきた。 「……なんかあったのか?」 「知りたい? 知りたい?」 俺は特に意味もなく、煽りたいがために身を乗り出して顔を近づけた。 近くで見ると更にイケメンだなぁ。俺の次に。 「いや、別に」 「実はねぇ……仲が良い友達が出来たんだ!」 興味無さそうな先生を他所に勝手に胸を張って自慢した。 「そっか、よかったな」 先生は呆れてるのか困ってるのか、それとも普通なのかわからないような表情で言ってきたが、俺は気にしないで自慢し続けた。 「羨ましいだろ~! このまま彼女も出来るといいな!」 「お前にはまだ早いな」 本心を口にしたところバッサリと切り捨てられてしまった。 時代劇に出てくる雑魚キャラくらいスムーズに殺られたな俺。 「んだとぉ! 嫉妬かよ!」 ムキになって文句を言うと先生は眉を下げ今度は確実に困ったような表情をし笑った。 「あぁ。もし、彼女が出来たらお前の彼女に嫉妬するんだろうな」 「やっぱり! ……って……え?」 あまりにも先生の言葉に違和感が無さすぎて理解をするのに少し時間がかかった。 そして、気づいた時には床に押し倒されていた。 床はいつも掃除されているのかホコリ1つ落ちていなく綺麗だ。 なんて考えていると先生が俺のまだ新品で綺麗なワイシャツのボタンを外し始めたため、だんだんと自分の置かれている状況が把握出来てきた。 や、やべぇぞ、こりゃ! 「ちょっ、先生っ!?」 「痛いかもしれないけど我慢してろよ」 「どういう……こと……だよ?」 顔が近い…… 俺が煽った時よりもさらに顔の距離が近くなった。 恐怖なのか驚きなのか恥じらいなのか、俺の身体は金縛りにあったかのように動けない。 そして、ゆっくりと唇が重なり俺の口をこじ開けるかのように無理やり舌が入ってきた。 「んっ!? んぅ……ふぁ……」 キス!? 長い長い! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ! 俺は逃れようと身をよじるが、両腕を捕まれ、先生が覆いかぶさっているため上手く逃げられない。 気が遠くなるほどのキスがやっと終わり、唇が離れた。 酸素が少ないせいか頭が上手く働かない。 「ふっ、可愛い顔しやがって」 「かわいくない……!」 いつの間にか露になっていた上半身の肌に先生の人差し指が上から下へと線を描くようになぞった。 「ひっ! くすぐったい……!」 「あー。可愛い……」 低く唸るような声で呟き、次に俺のズボンに手をかけられた。 「お、おい! 先生、正気か!?」 顔が燃えるように熱い。 見なくても俺の顔が真っ赤になってることがわかった。 「あぁ。正気だ」 女の子達と話してた時のような優しい目でも、さっきまでの俺に対する呆れたような目でもなく、飢えた獣のような目で見つめられ、冗談では済まないことがわかった。 た……ってる……まじ……かよ…… 「隼人……好きだ……」 「ひゃっ……!」 耳元で低く落ち着いた声で囁かれ、力が抜ける。 ただでさえ力では敵わないとわかってるのに、力が抜けてしまったから、もはや抵抗する気すら失せた。 「もう、好きにしろ……お花畑頭め……」
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