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8時間目
ーーピピピ。
部屋中に響く朝を知らせる時計のアラーム音。
最近の俺はこの音が若干トラウマ化している。
こりゃもう職業病ならぬ学校病だな。
行きたくないよー。だるいよー。
「……あと5分……」
アラームの音を消そうと時計に手を伸ばす。その途端、何者かに布団を剥ぎ取られた。
いやーん! 寝込みを襲うなんて変態!
てか。
「誰だよ……!?」
俺が勢いよく起き上がると、身支度をきっちり整えた高身長のイケメンがいた。
思わぬ人物に目をパチパチさせ、幻覚でないことを確認する。
優作先生……?
「おはよ。遅刻すんぞ」
「なんで……ここに……」
そう言いかけた時に昨日の出来事を思い出した。
そ、そういえば、先生が帰ろうとしてた時に俺が引き止めたんだった……
「俺はもう行くから、お前は支度出来たら早く学校に来いよ」
「んー」
先生の言葉に軽く返事をしながら俺もベッドから出た。
ダメだ。頭がまだ寝てたいってストライキ起こしてる。
「あと、勝手に悪いんだが、朝ごはん作ろうと思って冷蔵庫の中見させてもらったが、なんも無かったからコンビニで買ってきた。昨日はありがとっけな」
「いやいや。こちらこそありがとう」
先生は忙しなく時計を見て、俺が返事をするのとほぼ同時に出ていった。
寝起きの俺に言われても、あんま頭の中に入ってこないんだよな。
とりあえず先生はオカンだな。
俺は寝ぼけた頭でテーブルの上にある2つのコンビニのおにぎりの1つを手に取って袋を取り頬張った。
なんか悪いことしたなぁ。無理やり引き止めた挙句おにぎり奢ってもらっちゃって。
俺は感謝の気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「……ん!? 待てよこれ……ツナマヨかよ!? 俺マヨネーズ無理なんだけど!?」
文句を吐きながら水でおにぎりを喉に流し込み、もう1つのパッケージも見てみる。
「…………」
嫌がらせなのか、もう1つもツナマヨだった。
たまたまなんだろうけど、見事に俺の嫌いなものを当てやがって……
さっきまで眠かった頭が急に冴えてきた。
危うく感謝の気持ちが消え去りそうだったぜ。
俺はツナマヨを冷蔵庫の中に封印し、歯を磨くことにした。
食べ物の神様ごめんなさい。南無阿弥陀仏。
幸い俺は朝ご飯は食べなくても生きていける人だから朝食抜きでも全然平気。
その代わり3時間目になったら腹の虫が合唱を始め出すけどな。
ピコンッ。
「ん?」
スマホの通知音がなり歯を磨きながら自分のスマホを手に持って見ると誰かから通知がきていた。
通知の主は颯太だ。
これはこれはサディズム颯太さんではないか。こんな朝っぱらから何を言われるのやら。
『今日一緒に学校行かね?』
若干身構えながら画面を開いたが、想像と違う言葉で呆気にとられた。
さすがに何もなしにわざわざ俺をいじめねぇか。別に残念とか思ってねぇからな!? 俺はマゾじゃない!
「ははっ。こいつ俺以外に友達いねぇのかよ」
俺は苦笑しながら悪態をつくが、物凄く嬉しくて喜色満面だった。
これこそ輝かしい友情! そして青春!
『おう! 行こ行こ!』
俺が送ったらすぐに既読マークがつく。
はやっ! 俺のこと大好きかよ!?
『ありがとう』
黄色くて変な鳥みたいなスタンプとお礼の言葉がきた。たわいない会話なのに自然と心が暖かくなる。
よし。この鳥の名前はチキ山さんにしよ。
俺は近くに置いてある何も入っていない鞄を手に取りすぐに家を出て、昨日颯太と別れた道に向かった。
絶対に道に迷うなよ。まじで。お願い。
あーあ。昨日道しるべに石ころ置いてけばよかったなぁ。
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