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「何処なんでしょう? ここって」
「この場所は、父の故郷があったところです」
地図に記された住所を彼が指差して言う。
「そうなんですね、でもここには何が?」
なんだか謎めいた話にも聞こえて、そう問いかけると、
「私も、まだ行ったことはないので」と、彼が答えて、「挙式が済んで、君と晴れて一緒になれたら、ここへ共に行ってくれませんか?」と、言葉を続けた。
「……はい」
頷いて、まるで秘密の宝物の在り処でも示しているような地図を見つめた。
「父には、『おまえに愛する人ができたら訪れてみるといい』と、言われていました。けれど私は、誰かを自分から愛せることなどはないと思っていたので、ここへ行くことはついぞないだろうと感じていました。ただこの鍵は、父の守護代わりにといつも持ち歩いていたんです。
だから、君というかけがえのないパートナーを得られた今、ようやくここへ行けるようになったことが何より嬉しいんです」
「そんな風に感じてもらえて、私も嬉しいです……」言って彼の手を取ると、同じように私の手が取られて、
互いの手を握り、顔を寄せ合ってキスを交わした……。
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