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ゆっくりと食事を楽しんだ後、彼と二人であの星見のデッキへ上がった。
次第に暮れ始めていく空を仰ぎ見る。日が落ちると、夕空が燃えるような橙色に染まった。
寄り添ってワインを飲みながら、移り変わる空の色を眺める静かな時が過ぎていく。
やがてポツポツと星が見える頃になると、黙っていた彼が指先でメガネのブリッジを押し上げて、
「これを見てもらえますか?」
ふと思い出したようにキーケースから古びた真鍮製の鍵を出して、そう口を開いた。
「これは父から貰い受けた物で、生前に、『この鍵で開けられる家をおまえに託すから、いつかここへ行ってごらん』と話されていました」
言いながら、鍵と一緒に渡されたという折り畳まれた紙を広げると、そこには詳細な地図が書かれていた。
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