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……ドイツから帰国して直ぐ婚姻届を提出した。
二人一緒に住むようになって、改めて彼との結婚を実感する。
クリニックから先に帰って食事の用意をしていると、程なくして帰宅した彼が、「私も、手伝いますよ」と、キッチンに立った。
ワイシャツの袖を手早く捲ると、私は白で彼は黒のお揃いで買ったモノクロのエプロンを着けた。
黒一色のエプロンにネクタイを絞めた姿がスタイリッシュに嵌って、(男の人がエプロンをしているのっていいな…)と、見とれてしまう。
「どうかしましたか?」
「あっ、いえ…その、素敵だなって…」
はにかんで口にすると、彼が掛けているメガネのブリッジを指で押し上げて、唇にふっ…と穏やかな笑みを浮かべた。
「君も、真っ白なエプロンがよく似合っていて、私の妻は美しいなと」
『私の妻』と言われたことに胸の鼓動がドキリと高鳴る。
……私、本当に一臣さんの妻なったんだと思うと、幸福感がひしひしと込み上げるようだった。
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