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「こんにちは」と二人同時に頭を下げ、笑い合った。
「一昨日はどうも。あの後、あずきがぐっすり寝てくれてさ。ほんと、助かったから今日も来てみたんだ」
「七か月の子は元気ですもんね」
「そーなんだよー、寝かせてくれないんだ、俺の恋人は激し過ぎて」
二回目で「です」「ます」じゃなくなり、「僕」から「俺」になっているのが嬉しかった。
「フリスビーのこと、父に訊いてみたんですけどね」
「うんうん!」
あの人が一歩踏み出すと、一段と花の香りが強くなった。
「たまたま、一回キャッチできた時にいっぱい褒めてあげたら、次からは毎回出来るようになったみたいです」
「なるほどー、やっぱり犬は褒めて育てろなんだね。ま、犬だけじゃないか。お父さんて褒め上手なの?」
そう訊かれて改めて考えてしまったけれど、少なくとも、駄目なやつだと怒られたり非難された記憶はなかった。
私が答えられないでいると「一昨日、会ったあと考えたんだけどさ」と、続けて話しだしたから、どうしてもそれを訊きたい訳ではないみたいだった。
「今まで、あずきのリード放したことなかったんだよね、どっか行っちゃうんじゃないかと思って、おっかなくてさ。ドッグランも行ったことなかったし。でも、ちゃんと帰ってきたじゃん? あれってさ、どっか行っちゃうんじゃないかって、疑ったり、無理に捕まえてようとするとダメなんじゃないか、と思ったんだよね。信頼してさ、放してやれば、ちゃんと帰ってくるもんなんだなあって。お父さんがそうしてたから、って言ってたでしょう。だから、お父さんのこと、ちょっと聞いてみたくなったんだ」
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