防衛本能

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  「お! 思ったより元気そうだな」  哲平がたっぷり果物が入ったかごをテーブルに置いた。スーツを脱いで腕まくりをする。キッチンで果物を剥き始めた。リンゴにグレープフルーツ、マンゴー。 「俺の見舞いはこれ」  ゼリーやらプリンやらシュークリーム。そんなのを並べる。 「今どれが食いたい?」 「えっと、シュークリームと牛乳プリン」 「他は仕舞っとくからな、いっぺんに食うなよ」 「うん! 仕事は?」 「今日は切り上げてきた。たまには残業から解放されたいしね」 「花さんも疲れてるのに俺のところなんかに……」  ちょっと怒った顔が花に浮かぶ。 「本気で言ってんのか? 兄貴が弟心配して何が悪い」  本当は嬉しくて堪らない。ずっと会いたかったから。 「なんだ、シュークリームに負けたな? 冷蔵庫に入れとくから食いたくなったら食うんだぞ」  哲平は果物にラップをかけると冷蔵庫に入れた。 「ごめんね、哲平さん」 「いいって。気にすんなよ。食いたいもん食えばいい。牛乳飲むか?」 「うん!」  哲平は今のジェイにコーヒーも紅茶も飲んでほしくない。 「花さんたちは? コーヒー? 紅茶?」 「あ、勝手にやるから」  花がコーヒーを淹れ始めた。少しすると香りが漂い始める。 「どうなんだ? 体」 「……ずっとサボってるんだ。蓮、怒らないし起きるのがなんだか辛くって」 「そうか…… 散々河野さんから言われてるんだろうけど無理すんな。サボりじゃないよ、それは」 「じゃなに? 哲平さんには分かるの?」 「防衛本能ってヤツじゃないのかな。ここで動くのやめとけ、みたいな」  花がコーヒーを持ってきた。 「俺もそう思う。従った方がいいよ、体の要求には」 「いいのかな」 「お前ほどの働きもんがこうなってるんだ。俺はいいと思うよ。ってかさ、今まで頑張り過ぎてたからその反動なんじゃねぇの? お前、いつだって自分の体後回しにするからさ」 「そうでもないんだけど。蓮も同じようなこと言ってた」 「河野さんはお前のことをよく知ってるんだから。言うこと聞いとけ」  哲平の言葉に ぷっ と顔が膨らんだ。 「あ、20円!」 「そのイベント終わったもん」 「じゃ今のイベントは?」 「…… 顔が膨らんだら30円」  二人とも笑い出した。哲平が叫ぶ。 「変わんねぇ!」   
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