防衛本能

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   二人とも心の中では焦りが出ていた。早くもジェイの顔に疲れが浮かび始めている。 「食い終わったんだし、横になれよ。熱は?」 「だいたい37.3℃くらい」 「ずっとか?」 「その前後。風邪かなって思ったんだ、一度雨で濡れてからそうなったから。でも友中先生は違うって言うし。よく分かんないんだ」  ストレス性じゃないかと二人とも思う。よく働いていた。飛び跳ねるように仕事を楽しんでいた。だからついからかったり、あれこれ頼んだり。  花は話題を変えた。 「マリエが金曜にお前の好きな煮物作るってさ。河野さんにランチの時に預けるから食っとけ。じゃないと俺がマリエに怒られる」 「わぁ、楽しみ!」 「しばらく来れなくて悪いな」 「そんなこと無いよ、哲平さん! 6月が大変なことくらい、まだ覚えてるよ」 「そうなんだよなぁ。なんで6月って祝日無いんだ? 梅雨の時期だし体調悪くなりやすいのに。国民に対する虐めだろ、そう思わないか?」 「俺、政府じゃないし」 花が笑い出す。 「だよな! それにジェイが議員になったら日本の行く末が心配だよ」 「なんで!」 「だって、可哀そうだからってすぐ助成金に力入れるだろうし、税金とか取るのやめるだろうし」 「それって、やっぱりダメなのかな」 「しょうがないさ、福祉っていうのもあるしね。金が無きゃそんなとこも疎かになる」 「お金かけないでやればいいのに」 哲平はジェイの頭を撫でた。 「そうだな。でも金っていうのは必要悪だ。それがあるから上を目指す欲も出る」 「欲って大事?」 「お前が一番知ってるだろうに。お前のは金じゃないけど。ああ、俺は大事だと思ってる。和愛には可愛い服、着せたい。美味いもん食わせたい。笑顔でいてほしい」  こんな話も久しぶりだ。なんだかほっとする。喋っているうちに眠くなってくる。うとうとし始めるのを見て哲平はそばにある肌がけをそっとジェイにかけた。  花が静かにカップを洗う。哲平は部屋の中をチェックして小さな音でテレビをつけた。二人でそっと出て行った。   
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